2013年9月13日金曜日

Rapsody『She Got Game』

リリースは少し前ですが、9th WonderのJamla Records所属、Rapsodyの新作ミクステ。このミクステのDatpiffのコメント欄を見てると、基本的には賞賛の声が殆どですが(「The Best Female Rapper !」や「MIXTAPE OF THE YEAR RIGHT HERE」なんて声も)、中には

「I just don't like female rappers…(オレはフィメール・ラッパーが好きじゃないだけなんだ…)」

「No offense but I don't even like female rappers like that but this girl is dope(悪気は無いがオレもこういうフィメール・ラッパーは好きじゃないんだ、でもこの子はドープだね)」

「I don't mind listening to female music artists. But when it comes to rap I can't relate to these bitches.(女性ミュージシャンを聞くのは気にならないけど、それがラップとなるとオレは我慢ならないんだ)」

みたいなコメントが混じっていて興味深い。Lil KimやMissy Elliott、最近だとNicki Minaj辺りの例外はあるとしても、やはりUSではヒップホップは男の音楽なんだなあと実感します。ギャングスタ・ラップのサグでマッチョな世界観に魅せられた人にとって、フィメール・ラッパーは確かに受け入れづらいものなのかもしれませんね。

メディアも、その辺りについてはやはり言及は避けられないようです。

「In an industry where men are often the dominate figures, female lyricist Rapsody has clearly figured out how to shine through in the rap game.(往々にして男が支配的な世界の中で、Rapsodyはこのラップ・ゲームで輝く術をはっきりと見つけ出した)」XXLのレビューより

「Such talk should end with She Got Game, as Rapsody makes her case as an undeniably talented emcee regardless of her lack of Y-chromosomes.(そのような話は『She Got Game』で終わらせるべきだ、なぜならRapsodyはY染色体の欠如とは関係なく、紛れも無く才能のあるMCであると証明したからだ)」HIPHOP DXのレビューより

※そのような話…「彼女は新進気鋭の女性MCの1人だ」「9th Wonderの指導の下で」といったRapsodyを語る際に言われる枕詞のこと

※Y染色体の欠如…要するに、「女性である」ということ

肝心の内容ですが、2つのレビューの抜粋にもある通り、素晴らしい出来です。これまでミクステ4作、EP1枚、アルバム1枚を発表していますが、今作が最高傑作という声もありますね。師匠の9th Wonder、DJ Premier、Khrysisらの温かみのある渋いビートと、Rapsodyの安定感のある滑らかなフロウが堪りません。Lauryn Hillのファンだそうで、今作の「My Song」は彼女へのトリビュート・ソングだそう。確かに言われてみれば、そんな雰囲気はする。次のアルバム・リリースで、一気にブレイクするかもしれませんね。


2013年9月12日木曜日

SEEDA, DJ ISSO, DJ KENN『Concrete Green The Chicago Alliance (single)』

日本語ラップにハスリング・ラップの流儀を持ち込み、最新のアルバム『23edge』では当時流行のTrill Waveライクなプロダクションに挑戦したりと、世界(というかUS)のラップ・シーンに対する意識が人一倍強かったSEEDA。今回のシングルもChief Keefのミクステ『Bang』のトラックを手がけ、現在もシカゴで活動中のDJ KENNとタッグを組むなど、さすがの嗅覚。ただ、プロダクション以外の部分に目をやると、今作の少し違った側面を見ることが出来る。

1曲目ではいきなり韓国のストリート系ラッパー・DOK 2をフィーチャーし、A-THUG・STICKYと共にSCARSとして参加の2曲目では「Asian Jap」というフレーズを連呼。SEEDAの中で、「日本語ラップ × USラップ」という図式から、「アジアのラップ × USラップ」へと、少なからず変化があったように感じる。ブログに書いているが、その変化は異国の地・シカゴで孤軍奮闘する「侍」DJ KENNに触発されたのかもしれないし、USのシーンに食い込まんばかりの勢いのG-DRAGONに代表されるK-POPだったり、MOMENTのようなラッパーがいる日本語ラップ・シーンに影響を受けた結果なのかもしれない。

しかし、SEEDAのラップ・スキルの進化はとどまることを知らない。DJ KENNのビート上で英語・日本語を自由自在に操り、mikE maTidaとの共作曲ではそれこそシカゴのChief KeefやKing Lばりにオートチューンを使いこなしての歌うようなラップ。この人に限界はないのか。あとSEEDAとは正反対にいつも通りのA-THUG。微妙に乗りこなせてない感じが逆に個性的で面白い。「ケンちゃんNIGHT(LIFE?)」って何だろう…。


2013年9月4日水曜日

Goodie Mob『Age Against The Machine』

Goodie Mobの存在を初めて知ったのは、今はもう廃刊になってしまったsnoozerからディスクガイドが発売された2004年(Outkast『Speakerboxx/The Love Below』関連の作品として、ベスト盤『Dirty South Classics』が載ってた)。ただ本当にGoodie Mobにハマったのはここ1年程の間で、理由はというと、Amazonで『Soul Food』と『Still Standing』の2枚が中古で安く売られてるのを発見・購入したから。正に「Dirty South」と形容すべき泥臭いトラックのドープさと4MCのラップスキルの高さに魅了され、特にCee-Loの化け物のようなラップと歌には腰を抜かした(ソロのアルバムや他のプロジェクトはそれほどでもないのだが)。で、そんなタイミングでのGoddie Mobの「オリジナル・メンバー」での再結成とアルバム発売。

結論からいうと、予想していたほど良くはなかった。XXLマガジンのレビューでは5段階で3の評価の「L」で、選評から抜粋すると

Despite being in different places, the group has decided to reunite for their first proper album in over a decade. And just like Soul Food, Age Against The Machine tries to succeed in being different and innovative. At times, the results are disastrous, but the album always remains interesting.

「異なる立ち位置にも関わらず、グループは正式なアルバムを作成するため10年ぶりに再結成することを決めた。そして『Soul Food』のように、『Age Against The Machine』も個性的・革新的であろうと試みている。時としてその結果は悲惨なものとなっているが、アルバムは常に興味深いものになっている」和訳するとこんな感じでしょうか(拙い英語力ですいません…)。ボクもこの評価にほぼ100%同意です。

まずトラックが『Soul Food』や『Still Standing』の時のような泥臭いものでなく、現行の最新のヒップホップシーンのそれに近いものになっている。ドラムマシンから打ち込まれた金属的なハットの音や、EDMから影響を受けたと思われる電子ノイズ。こうした「今の音」がふんだんに盛り込まれている。事実上の1曲目「State of the Art (Radio Killa)」を聞いて「えっ!?」と思ったのはボクだけではないはず。

またHIPHOPDXの記事によるとより多くの人に届いて欲しいという気持ちもあったようで、かなりポップな曲もアルバムには収録されている。「Valleujah」や「Amy」のフックは、シンガーとしてのCee-Loの才能が存分に発揮されている。ただこれらのポップな曲調は、『Soul Food』や『Still Standing』を期待していたファンからすれば裏切られたと感じるかもしれない。

ただこれらの実験が全て失敗したかと言われれば、そうでもない。PVが発表された「I'm Set」「Special Education」、T.I.が参加した「PinStripes」なんかはなかなかの出来で、これがまたアルバム自体の評価をややこしくしている。

じゃあ昔と全く変わらない音だったら良かったかというと、それはそれでどうなのかという考えが頭をよぎる。ファンが描くGoodie Mob像と、本人達の望むGoodie Mob像と、現行のヒップホップシーンと、それぞれの間の溝。再結成アルバムを『Age Against The Machine』と名づけ、「まだまだオレらは現役だよ」と言いたかったのだろうが、やはり14年という歳月は長かったということか。

2013年4月17日水曜日

PortaL『MAD MIX 2』

何でもありなレイヴ・イベント「Soundgram」を主催するDJ、PortaLによる初のMIX CD。ダブステップ、ジューク/フットワーク、ジャングル等を1~2分でガンガン繋いでいくんだけど、これが最高にクレイジーで素晴らしい。自身が主催するイベントをそのまま体現するような雑食性。楽曲を飲み込んでどんどん大きくなっていくモンスターのよう。個人的には中盤のジューク/フットワークへの展開が、まるでキメながら『ブレードランナー』のようなSFの世界でぶっ飛んでいるような感じで最高でした。これでいて尚且つ、めちゃくちゃに踊れるMIXになっているのが素晴らしい。街中で急に踊りだしたりしないように。


2013年4月8日月曜日

孤島の王





















ノルウェーのオスロ南部にあるバストイ島。そこには1900年から1953年までの間、犯罪を犯した少年を更生させるための施設があった。だがそこで行われていたのは更生とは名ばかりの、職員による締め付け、過酷な懲罰、性的虐待。そうした環境の中でも少年達は規律を乱すことなく耐えていたが、ある少年の自殺をきっかけとして、溜まっていた不満が爆発する。

同じような題材としては『大脱走』や『ショーシャンクの空に』などが有名だが、本作で描かれている少年達の人間としての尊厳や自由を希求する姿は、『レ・ミゼラブル』で革命を求め戦う人々の姿に重なる。もしくは、コミック版『V・フォー・ヴェンデッタ』のラストでもいい。組織化されてもなく、リーダーもなしに自然発生的に起こる暴動・蜂起に、人間として手放してはいけないものは何か、痛感する。憲法改正や徴兵制の検討など、きな臭いニュースが耳に入る今のこの国で、このような映画を観る価値は間違いなくある。

更生施設の院長役として、デヴィッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』でマルティン役を演じたステラン・スカルスガルドが出演しているが、その他はほぼ無名のキャストによるものらしい。個人的には、施設で優等生的な役割を務めていたオーラヴ役を演じたトロン・ニルセンという役者が印象に残った。

2013年4月3日水曜日

BLUEBERRY『C.R.E.A.M.』

THINK TANKからBABA a.k.a. BLUEBERRYの最新MIX。レーベルはBLACKSMOKERからではなく、BLACK MOB ADDICTというレーベルから。調べてみたら、BLUEBERRYのMIXが他にも2枚ほどリリースされてる模様。ドロドロとしたファンクから始まって、ウータン、ナズ、ビギー、コモン、スヌープ、ATCQ、Smif-N-Wessunなどの定番から、Death Grips、Tyler, The Creator、Black Hippy、UKグライム、果てはアフリカ産かと思われるモノまで、ラップチューンが次々と繋がれていく。その数なんと40曲。音質は荒いものの、それが却ってMIXの妖しさを強調しているかのようで良い。


2013年4月1日月曜日

MASS-HOLE as BLACKASS『Telephone my girlfriend on a cold dai』

2月のREFUGEE MARKETはとにかく混んでいて、人が密集していたせいか疲労困憊な人が多かった。MASS-HOLEのDJ中、ボクの隣の兄ちゃんもスピーカー横だったにも関わらず、今にも寝そうな勢いだった。この日のMASS-HOLEのプレイは、かなり酒が入っていたせいもあり記憶はおぼろげだけど、強烈なベースとダビーな音響に思わず震えた事ははっきり覚えている。MASS-HOLEによる最新のMIXは、センチメンタルなタイトル通り、甘いソウルやR&Bを中心としたMIX。2月のREFUGEEの時のボクの記憶とは違った、MASS-HOLEのメロウな部分が堪能できる。春が来たといってもまだ少し肌寒い季節に、程良い暖かさを感じさせる内容。


2013年3月28日木曜日

ECD『The Bridge - 明日に架ける橋』

前々作『TEN YEARS AFTER』でそれまでの過去を振り返り、前作『Don't Worry Be Daddy』では『TEN YEARS AFTER』以降の「今」の生活を切り取ったECD。今作『The Bridge - 明日に架ける橋』は、前作のラスト「Sight Seeing」のアウトロから始まる事に象徴されるように、過去2作の延長線上にある。

前作と今作で決定的に違うのは、東日本大震災、そして、それに起因する東京電力福島第一原発の事故。特に原発事故によって、ECDの生活は大きく変わった。休日はデモで渋谷や原宿を練り歩き、毎週金曜日は官邸前でマイクを握る。非日常的だった出来事が、日常的になってしまった。

今作『The Bridge - 明日に架ける橋』では、こうした前作以降変化してしまった日常がテーマの1つとなっている。現在の仕事がなくなり、原発の廃炉作業員として働く自分を想像する「遠くない未来」、粗悪ビーツの「負けない」をサンプリングし、震災や原発事故以前/以後の変化を綴る「今日昨日」。この2曲に、ECDの政治的姿勢がはっきり現れている。

ただ日常が変化したとはいっても、当然変わらない部分もある。2児の父親としての日々の記録「知らん顔」、一人暮らしの頃を思い出しつつも、夫として、父親としての日々も悪くないと語る「NOT SO BAD」このような生活の断片も、私小説的に語られている。またERAの声をサンプリングし、ヒップホップのトレンドと自分のミスマッチをユーモラスに表現した「憧れのニューエラ」や、ネットを主戦場とした今の日本語ラップシーンについて歌った「ラップ最前線」のような曲も収録されている。

こうした曲群の中でも印象的なのが、アルバムのタイトルトラックである「The Bridge」からラストに収録の「APP」への流れ。「The Bridge」は、ECDILLREMEの先日公開された「反レイシズムRemix」でも使われたメロウなトラックに乗せ、今後の人生への不安や焦燥感に捉われながら、それでも一歩ずつ進んでいくしかないんだという意思を表明している。そこから、過酷な毎日の中、それでも続いていく人生や音楽やパーティーへの祝福である「APP」に繋がり、アルバムは大団円を迎える。

曲によっては内容はかなりヘビーであるにも関わらず、サウンドは前作と比べ高揚感と多幸感に満ち溢れている。イリシット・ツボイの実験的でクレイジーな手腕も冴え渡っており、聞き応えは十分。この力強くフレッシュな音と言葉が、先行きの見えないこの日本という国を生きる我々リスナーに、一縷の希望を与えてくれる。


2013年3月27日水曜日

誰も知らなかったココ・シャネル





















ココ・シャネルの生い立ちから戦後まで数々のエピソードを掘り起こし、なぜ彼女が反ユダヤ・反共主義になり、最終的にナチスのスパイになったのかを解き明かしていくノンフィクション。Twitterでかなり前に話題に挙がっていたもののなかなか買えず、最近になってようやく手に入れた。

ココ・シャネルだけでなく、ココ・シャネルのスパイ活動を行う上でのパートナーだったハンス・ギュンター・フォン・ディンクラーゲ男爵(通称シュパッツ)という人物の活動についても、フランス情報部の資料などを元に詳細に書かれている。この2人に関するエピソードを補足するように、当時のヨーロッパの政治状況に関する記述もあるので、予備知識が無くとも読みやすい。また本書はそうした政治的なトピックだけでなく、誉れ高いシャネルの香水「No.5」の開発についての逸話や、シャネルの登場が当時のファッション界に与えた影響など、「シャネル」というブランドの歴史にも大きくページを割いている。

中には、ココ・シャネル自身のパーソナリティについての言及もある。その奔放で強気な性格や、イギリス国王の従兄などを含んだ錚々たる面々が並ぶ男性遍歴。更にそこから派生して、ココ・シャネルを含めた戦前・戦中の富裕層の生活。これらの記述から想像されるのは、『ミッドナイト・イン・パリ』に描かれているような華麗な生活よりも、(国は違うが)『地獄に堕ちた勇者ども』の退廃的なそれに近い。何となくではあるが、当時のヨーロッパの富裕層の生活の一端が窺い知れてなかなか興味深い。

2013年3月22日金曜日

SHAME





















アイルランドからNYに移住し、仕事でも有能なブランドン。しかし彼は、仕事場でもポルノ画像を収拾し、自宅では娼婦を呼んでひたすらセックスをするセックス依存症を患っていた。そんなブランドンの元へ、自傷癖があり恋愛依存症でもある妹のシシーが転がり込んでくる。そこから、2人の生活が崩壊していく。

劇中でセックスや自慰のシーンは山程あるものの、そこにエロティシズムはなく、ただただ痛々しさが残るだけ。セックス依存症の現実を痛いほど描写している。監督はあのかの有名な俳優と同じ名前、スティーヴ・マックイーン。この監督にはこれからも注目していきたい。ブランドンを演じたマイケル・ファスベンダーは、台詞は少ないながらもセックス依存症の男を生々しく演じきっていてお見事。シシーを演じたキャリー・マリガンも同じく。

また、監督が映像作家なだけに、映像が全体を通してスタイリッシュなのも良かった。NYの夜の街や、シシーがバーで歌うシーンなど大変美しい。この美しい映像があるからこそ、セックスや自慰のシーンの惨めさがより際立つ。美しい映像と映画が扱っているテーマの惨めさ・エグさの2つの間の落差が、この映画の魅力かもしれない。

2013年3月20日水曜日

ONE-LAW『MISTY』

昨年の『Misty The Sound Crack』に続く、ONE-LAWの実質的な1stアルバム。参加アーティストには、MONJU、BES、Fla$hBackS、K-BOMB、漢、NIPPSなど錚々たるメンツが集合している。マスタリングは『Misty The Sound Crack』に続いてINNERSCIENCEが担当。ちなみにこのアルバムで使用されているトラックの多くは、『Misty The Sound Crack』にも収録されていたもの。

まずは黒いサウンドのイメージがあるMONJUに対して、浮遊感のあるトラックという意外な組み合わせの「Misty」でアルバムは幕を開ける。NORIKIYOとBRON-Kの「Akage No Fantastic」にはメロウなトラックをぶつける。BRON-Kの繊細な歌声とトラックが素晴らしいケミストリーを生み出している。個人的にはこれがベストトラック。「Re:Loaded」のKILLah BEENのタイトなラップには、ストレートなブレイクビーツで真っ向勝負。Mary Janeの歌声が美しい「To You」。ラスト「Kingdom」では、RGFの面々とBESのラップの凄みに圧倒される。全体を通し、ONE-LAWのプロデューサーとしての手腕が如何なく発揮されている。更に、「I'm Fine No Thank-You」でONE-LAW自身もラップを披露。

また、このアルバムには上記の他にBLYY、三島 a.k.a. 潮フェッショナル、メシアTheフライ、KNZZ、B.D.などが参加している。これらのメンツに共通するイメージは、池袋にあるクラブ、bed。池袋ひいては東京のヒップホップの中心であり続けている老舗のクラブで、これまでも日本のヒップホップの発展に一役かってきたbedの周辺にいるラッパー達が大きくフィーチャーされている。ONE-LAWもそうしたbed周辺のシーンの一人で、bedで行われた数々のパーティーに出演している。

このアルバムは、ONE-LAWのトラックメーカー、プロデューサー、ラッパーとしての実力を証明すると同時に、bed周辺のシーンの充実ぶりを日本語ラップリスナーに対して提示している1枚となっている。様々なラッパーをフィーチャーしているという意味では去年のDJ PMXや今年のBCDMGのアルバムと同じだが、特定のシーンをREPしている点がこのアルバムを特別なものにしている。


2013年3月19日火曜日

A-THUG & DJ SPACEKID『FREEZ CITY』

去年リリースの『HEAT CITY』に続く、DJ SPACEKIDとのMIXシリーズ第2弾。今回は既発曲はなく、全曲新曲or未発表音源。ラップするのは、酒・女・ドラッグ。SCARSの面々の登場以後はありきたりなトピックだけど、A-THUGの言語感覚でラップすると魔法がかかる。「吸い込むkush オサマとブッシュ」「ぶっとんでるし金も持ってる お前が持ってるのはジェラス」などパンチライン連発。「80%」で「8割方」ってワードを連発してるのも面白い。THUGMINATYのT.O.PやSCARSの盟友STICKY、惜しくも今年亡くなったBIG-T、DJ TYKOHなどを客演に迎え、ハスラーとしての日々をスピット。客演の中では、STICKYのリリックの凶暴さが頭一つ抜けてる。個人的なベスト・トラックは「Don't Stop」。DJ TYKOHのシャウトに、A-THUG、SIMON、Y'sのラップが加わってイケイケ。TRAPライクなプロダクションもラップに合ってる。


2013年3月18日月曜日

スリー・キングス





















湾岸戦争終結直後のイラク。実戦経験が殆どないトロイは、イラク軍の捕虜の尻から地図を発見する。それは、イラクがクウェートから盗んだ金塊の在りかを示した地図だった。トロイの上官であるアーチーはその地図を元にトロイ、チーフ、コンラッドの4人で金塊を探しに行く。金塊は無事見つけたものの、イラク軍による反フセイン派への弾圧を見た4人は、停戦協定を破ってイラク軍と戦闘してしまい・・・。

世界にひとつのプレイブック』のデヴィッド・O・ラッセルの99年監督作。アーチーを演じたジョージ・クルーニーはこの撮影中に監督を殴ったというほど現場は荒れていたようだが(デヴィッド・O・ラッセルは双極性障害を患っていて、その症状が現場で出てしまったらしい)、そんなハードな現場だったとは思えない快作。10年程前に一度TVで観て面白かった記憶があったが、もう一度観直してもやっぱり面白かった。

妻子あるアメリカの一般市民であるトロイの拷問シーンでは、湾岸戦争におけるアメリカの狙いであった石油をトロイに飲ませ、更にイラク兵が実はアメリカによって養成されたこと明らかにし、アメリカの虚飾を剥がす。このシーンは、この映画の政治的な立場を明確に表している。湾岸戦争から10年弱、911のテロの2年前という微妙な時期だからこそ作れた映画だと思う。今考えると、こんな過激な映画をよくTVで放送できたなと…。また、初めは使い様のない武器と思われていたフットボール爆弾の伏線の回収の仕方が見事で思わずニヤリ。

2013年3月16日土曜日

ジャンゴ 繋がれざる者





















奴隷だったジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が元歯科医で賞金稼ぎのシュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の手を借りながら、農園主で富豪のカルビン(レオナルド・ディカプリオ)から妻・ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を取り戻そうとするマカロニ・ウエスタン。タランティーノ、3年ぶりの監督映画。

パンフレットにある町山智浩さんの解説に、この映画は「ブラックスプロイテーション」だと書いてあったが、正にその通り。黒人を差別し、モノとしか見ていない人間は最終的には悲惨に撃ち殺され、カルビンの屋敷はラストに盛大に爆破される。爆破の後でサングラスをしてキメたジャンゴの姿は、ブラックスプロイテーション映画の主人公そのまま。

ジャンゴとシュルツを夜に襲撃しようとするKKKのような集団の不毛で下らない会話のシーンや、ド派手な銃撃シーンなど、タランティーノならではの演出も健在。映画後半にジョニー・トーの『エグザイル/絆』を思わせるような室内での銃撃シーンがあるが、これは一見の価値あり。

役者に関して言えば、アカデミー賞・助演男優賞を受賞したクリストフ・ヴァルツは当然素晴らしかったが、悪辣な農園主を演じたディカプリオも負けず劣らず良かった。個人的にはこちらに賞をあげたい。またサミュエル・L・ジャクソンが農園を仕切る執事・スティーブンを演じていたが、これは反則。誰かが言っていた通り、志村けんのコントに出てくる老人そのまま。喋る度に笑ってしまいそうだった。

2013年3月15日金曜日

Fla$hBackS『FL$8KS』

jjj、Febb as Young Mason、KID FRESINOの3人から成るFla$hBackS。このFla$hBackSの1stアルバム『FL$8KS』が、日本語ラップの今年のリリースの中でも一番のトピックだったことは間違いない。とにかく皆大絶賛で、批判はボクの見たところ1つもない。早くも今年のベストアルバムに推す声も少なくない。

ボクもこのアルバムは大好きなのだけど、ずっと考えていたのは「Fla$hBackSのどこがこんなにフレッシュなのか」ということ。このアルバムは確かにカッコいいものの、一聴しただけでは明らかに目に見えて斬新な所は無いように思える。じゃあなんでこんなにフレッシュに聞こえるのか。

1つには、バックトラック。ぱっと聞きでは、単なる90年代リバイバルのように聞こえるかもしれない。ただ、ボクにはそんな簡単に括れるものではなく、そこに加えてもっときらびやかで派手な要素(2000年代以降の、例えばDipsetやKanye Westのプロダクションのような)がプラスされているように聞こえる。他にも、ベースや上モノなどの音のバランス(実際これがかなり大きいと思っている)が、90年代リバイバルとは確実に一線を画しているのではないか。

2つには、ラップの(特にjjjの)フロウ。リリックは日本語と英語の混じったものであるものの、バイリンガルとまではいかないバランス。この辺りはSEEDAやBESよりもS.L.A.C.K.以降、といった感じか。ただ、フロウが少し変わったリズム感、というか間合いの取り方をしている。BESでもなく、RAU DEFでもない微妙な感覚。それが聞き手に新鮮な印象を与えている。

この妙な間のラップが前述の特異なトラックに乗ることで、新しいケミストリーを生み出しているのではないかと。まあ、ここまでごちゃごちゃと言っといてなんですが、兎にも角にもとんでもない若者が出てきたことは間違いない。我々リスナーは、この最高のヒップホップを素直に楽しむべき。




2013年3月13日水曜日

北関東スキルズ『ILLAKANTO VOL.4』

3月10日の反原発デモの後、A-THUG & DJ SPACEKIDの『FREEZ CITY』(これも良かった)を買おうと新宿のユニオンに立ち寄ったら、これが商品棚の一番上に置いてあった。「北関東スキルズ」という名前は何度も耳にしたことがあったものの音は聞いたことがなく、1200円強という値段が決め手となって購入。そして家で聞いて、ぶっ飛んだ。ネオ東海の他にも、地方にこんなとんでもないヤツらがいたのかと。

想起したのは、El-PなんかのNYアンダーグラウンド界隈。日本語ラップは日本の音楽の中でアンダーグラウンドな存在だと思うけど、その中でもアンダーグラウンドというか。ラップもトラックも、それが発する雰囲気がとにかく不穏で危険。SWAG(もはや死語か)なんて言葉が遥か遠くに感じられる程、ILLでDOPEでSICK。WENODの商品説明を読む限り、1~3は未発表音源中心で、今回は全曲新曲みたいで。こうなると2011年にリリースされたアルバムも俄然気になる。今は金欠で買えないけど、余裕ができたら買ってみよう。


2013年3月11日月曜日

ECDILLREME - The Bridge 反レイシズムRemix



おそらくトラックは、今月発売のECDの新譜『THE BRIDGE : 明日に架ける橋』中の「The bridge」のもの。奇しくも「Recording Report」の反原発Remix(今はもう消されてる模様)の時と同じようなタイミング。リリックが両者とも本当に素晴らしいので、是非soundcloudのページで確認してほしい。歌詞にある通り怒りを表明するECDと、レイシストを諭すようなILLREME。聞き終わった後に力が湧いてくる、怒りとやさしさが混じり合ったような名曲。本当に色んな人に聞いてほしい。

2013年3月8日金曜日

How To Destroy Angels『Welcome Oblivion』

NINのトレント・レズナーの新プロジェクト、How To Destroy Angelsの1stアルバム。ちょこちょことvimeoにビデオをアップしてましたが、ようやくまとまった作品が到着。メンバーはトレントの奥さんマリクィーン・マンディグ、『Social Network』や『ドラゴン・タトゥーの女』の音楽でタッグを組んだアッティカス・ロス、そしてNINの『With Teeth』以降のアルバムでアート・ディレクターを務めたロブ・ジェダリンの4人。昔は何もかも一人でやった方が早いと言っていたトレントが、ここにきてこうしたグループを結成したのは興味深いというか、理由が知りたくはある。

サウンドは、エレクトロとアンビエントとノイズを上手く折衷させたような。終盤はテクノのような曲もあり。ただNINのような閉塞感やハードさ、インダストリアル色は薄め。この辺りは『With Teeth』以降の作風を引き継いでいるような感じ。特にハードさが薄いのはNINとは決定的に違う。こういう所はNINファンには受けが悪いかも。シンプルなようでいて緻密なアレンジは、トレント&アッティカスのコンビらしい。メインVoのマリクィーンの声も美しい。


2013年3月4日月曜日

ROO-TIGER『真田虫非行ツアー』

日本語ラップ好きだけど、たまにはちょっと変わったものが聞きたい。そういう人には、ROO-TIGERが今一番のオススメ。好きか嫌いかは一旦置いといて、少し変わった日本語ラップが聞けるのは間違いない。

下品な言葉であれ何であれ、ラップする上で面白い言葉なら何でも使う。ありえない言葉の組み合わせでパンチラインを作ってみせる。それがJet City Peopleからの新たな刺客、ROO-TIGERのスタイル。特徴的な声も相まって、そのラップはレーベルからのインフォにある通り、宇宙人がラップをしているように聞こえる。声もリリックも、好き嫌いが分かれることは間違いない。ただ、ハマった人は徹底的にその魅力にノックアウトされるはず。

JCPからの客演も、アルバムに華を添える。BASE、Campanella、TOSHI蝮…。個人的なお気に入りは、「ブス5000」での呂布カルマ。そもそも曲のタイトルがアレだし、女の子はあまりのえげつなさに引いてしまう可能性大だけど、ボクは大いに笑いました。JCPの中心人物である鷹の目は、ミックスやマスタリングなど裏方から支援。こんな最高なアルバムが、隠れた名作なんてことにならないことを祈る。


2013年3月1日金曜日

L.L.K.P『L.L.K.P』

大阪府交野市が地元の、2人のビートメーカーと4人のMCから成るグループL.L.K.Pの1stアルバム。大阪ではMads周辺の動きに注目しているのですが、このグループにもMadsからKroudがラップで、そしてそのKroudとLow Class Sessionというグループを組んでいるSH BEATSがビートで参加。他にもMadsからは、CHAKRAが客演で1曲参加。2人のビートメーカーが手掛けるフリーキーなビートと、4MCによる四者四様のやりたい放題なラップの組み合わせがかなりハマってる。大所帯によるごちゃごちゃとした雰囲気が醸し出しているポッセ感も良い感じ。


2013年2月27日水曜日

Astro AKA The Astronomical Kid『Deadbeats & Lazy Lyrics』

最近聞いて面白かったミクステはコレ。NYはブルックリンのラッパー、Astroの新作。公式サイトのバイオグラフィを見てると、ラキムやKRS-One、RUN DMCなんかのリリックを研究していたらしく、自ら「diehard old school rap fanatic(頑固なオールド・スクール・ラップの狂信者)」と言ってますね。確かに一聴して分かる通り、トラックもラップもかなりオールド・スクールからの影響を感じる。ただどこかオールド・スクールには無い新しさも感じて、それがまた面白い。

2013年2月26日火曜日

Iceage『You're Nothing』

デンマークの4人組パンク/ハードコア・バンド、Iceageの2nd。レーベルはアメリカのMatadorから。ちょっと意外な組み合わせ。生き急いでいるかのような疾走感、金属片を擦りつけているようなギターサウンド、虚無感を感じさせるヴォーカルの叫び。彼らの1stに感じた魅力はそのままに、更にパワーアップしたような。タイトル曲でありアルバムのラスト曲である「You're Nothing」のコーラス部分で、爆走するバンドの演奏にのせて「You're Nothing(お前には何もない)」とやけっぱちに繰り返し叫ぶ様は、何か胸に込み上げてくるものがある。是非日本でライブを見てみたい。


2013年2月25日月曜日

世界にひとつのプレイブック





















妻が離れていったことが原因で精神を病んでしまった男と、夫に死なれたショックから立ち直れない女が、ダンス大会を目指して練習をしていく中で徐々に惹かれ合い、そしてどん底から再起していく様がコメディタッチで描かれる。

ただコメディと言いつつも、根本にあるテーマは「底辺から這い上がる人間」と「家族愛」の2つ。これは監督であるデヴィッド・O・ラッセルの前作『ザ・ファイター』と同じ。事前にラブコメ映画だという触れ込みを聞きつつもこの監督なら何かやってくれるだろうと思っていたので、予想通りで少しニヤリ。

素晴らしかったのは、ヒロインのティファニーを演じたジェニファー・ローレンス。精神が不安定で時にはクレイジーでありつつも、繊細で、チャーミングで、愛に溢れた人物であるティファニーを好演。主人公パットのランニング・コースに何度も出没するシーン、ダンスの練習に来なかったパットの家に殴りこんでいくシーン、やけっぱちになってテキーラをがぶ飲みするシーン、愛おしい瞬間が多すぎる。

あとパットの友達で精神病院から脱走を何度も繰り返すダニー役でクリス・タッカーが出演していて、あまりに久しぶりにスクリーンで観たので思わず我が目を疑った。『ラッシュアワー』以来か。

2013年2月23日土曜日

DJ Highschool『WDSOUNDS EXCLUSIVE MIX』

BBHやSonetorious名義での活動、D.U.O. TOKYOのバックDJ等でおなじみの、DJ HighschoolによるMIX。本来の発売日は27日ですが、原宿のBACKWOODS BOROUGHで先行販売してるのをゲット。ちなみにBACKWOODS BOROUGHでボクがしゃべった店員(店長?)さんもヒップホップ好きで、池袋bedなんかに時々出没しているみたい。親近感。

肝心の内容はというと、ポップスを序盤と終盤に挟みつつも基本はやはりヒップホップ。ただヒップホップの中でもゴリゴリの黒いブツではなく、レイドバックした感じの曲が多め。全体に漂う、聞きながら散歩にでも繰り出したい雰囲気が最高です。このままのムードでフェイドアウトしていくかと思いきや、それを自らぶち壊すかのように、最後はハードコアで締め。これはアガる。これぞWDsounds。


2013年2月20日水曜日

KILLah BEEN『公開』

16FLIP、BLYY、PUNPEE等による黒くタイトなビートに、時折ブルースのような哀愁を漂わせるリリカルなラップ。客演はなし。同様の作風のラッパーとは一線を画すかのごとく、skitのように挟まれる不穏なトラック。こうした要素だけでも、十二分に最高のラップ・アルバムになっている。

しかし、このアルバムをより特別なものにしているのは、何といっても「囚 - Under Parole's Demo」。KILLah BEEN自身が体験した2年間に及ぶ刑務所暮らしの始まりと終わりが、ラップというよりもポエトリー・リーディングのような形で表現される26分間の大作(こうした作風は、TBHの「We Must Learn」や「路上」を思わせる)。

淡々としたビートの上で、刑務所の悲惨な暮らしやその中でのKILLah BEENの心境が言葉の海となって綴られる。その様はまるで映画やドキュメンタリーのよう(それこそ『預言者』を思わせる)。聞いていく内にズブズブとはまっていき、最後には曲の世界に飲み込まれる。今作唯一のメロウな瞬間である終盤になると、自然と目に涙が溢れてくる。圧倒的な1曲。キラキラと光り輝くFla$hBackSとは対極にあるような重い感触。でも、これもヒップホップというジャンルの持つ魅力の1つ。


2013年2月18日月曜日

Raining Stones





















巨匠ケン・ローチによる、93年の作品。93年といえば、サッチャーによる弱者切り捨ての影響が色濃い時代。オアシスが出てきたバックグラウンドは、正にこうした状況。タイトルの「レイニング・ストーンズ」とは、マンチェスター地方の俗語で「石が降ってくるように辛い生活」という意味らしい。

今作の主人公ボブは失業中、正に「レイニング・ストーンズ」な生活を送っている。しかし敬虔なカトリックであるボブは、娘コリーンの聖餐式用のドレスは新しく立派なものにこだわる。法に触れる仕事を含め様々な仕事をするものの、元々が底辺の生活、金は貯まらない。最終的に、たかがドレスのため(しかしボブにとってはそれが大事)借金に手を出してしまう。当然のことながら返済は滞り、取立人が家に乗り込んでくる。家族を脅されたボブは怒り、取立人と格闘、結果として取立人は死んでしまう。ボブは罪を悔い、神父の家で罪を告白、警察署に出頭すると言う。しかしそれに対して、神父の答えは「ノー」。警察署には行かず、そのままにしておくことを勧める。そして借金の借用書を燃やしてしまう。

ボブのカトリックの教えに沿った行動を、神父が否定するという矛盾。信仰に沿って地獄のような生活に堕ちるか、法や信仰に背いてでも幸せに生きるのか。生きていくためにはボブは優しすぎ、信仰など邪魔なだけなのだろうか。聖餐式の途中、走っていくパトカーが気になって仕方ないボブ。おそらく一生罪を悔いながら生きていくのだろう。

貧しく厳しい生活を描写する中でも、ユーモアや主人公達への暖かい視線が含まれているがケン・ローチらしく微笑ましい。この前作である『リフ・ラフ』に続いて、80年代~90年代のイギリスの貧困層を秀逸に描いた傑作。

2013年2月13日水曜日

Toro Y Moi『Anything In Return』

これまでチルウェイヴと括られてるアーティストは試聴してもいまいちピンとくるものがなかったというか、はっきり言って「これはアカン」と思うものしかなかった。How To Dress WellやWashed Outは何回聞いても全然良さが分からない。でも今作は聞いた瞬間、一気に音やイメージが頭の中に入り込んできた(Toro Y Moiはこれまで試聴したことすらなかった…反省…)。全編を通してダンサブルで、多彩な音が幻想的な空間を作り出してる。そしてとにかくメロディが抜群にいい。難しいジャンルの括りに入れずにポップ・アクトとして紹介しても、全く問題ないと思う。またディスコチックな曲を聞いてると、Friendly Firesはこれをやれば良かったんじゃないかみたいな瞬間も。色んなレビューを見てると今作はかなりダンスの要素が多いみたい。なので過去作を聞いた時に同じような感想が出てくるかは分からないけど、少なくとも聞いてみようという気にはなった。

それにしても、インディ・ロック界隈に見られるこういうレビューは何とかならないもんだろうか。書き手の自己満足だけが伝わってきて、肝心の音楽そのものやその音楽を聞いた時の感覚(ECDが昔、レビューはリスナーが思いを共感するためにある、みたいなことを書いてて激しく頷いた思い出がある)が伝わってこない。読み手に音楽を聞かせるどころか、却って遠ざける要因になってるんじゃないかと真剣に思う。少なくとも実際オレがそうなってる。

2013年2月12日火曜日

Wolf24『President's Wolf』

昨日(2/11)のGONZALES@池袋bed、素晴らしかった。一番くらったのは仙人掌のライブ。ゲストで出てきたISSUGIとのステージがアグレッシブでカッコよすぎた。ライブでこんな衝撃、ラップ以外の音楽も含め久々。他にもO.I.のライブを始めライブもDJも最高で、bedの雰囲気と相まって凄く良いパーティーだった。

そのGONZALESにDJで出演していたWolf24のMIX CD、現場でゲトりました。残念ながら、Wolf24がDJしてた時間は酔い潰れてて記憶にないけど…。でもこのMIXは最高。レゲエやソウルが緩やかにMIXされてて、かなりリラックス。あまりにもリラックスしすぎてて仕事のBGMには向いてないけど、休日や休憩の時間にはもってこいなんじゃないでしょうか。


2013年2月6日水曜日

Sasha Go Hard『Round 3』

シカゴのフィメール・ラッパー、Sasha Go Hardの新作。これまでのSasha Go Hardのミクステはどこか一本調子な感が否めなかったものの、今作はなかなかいい感じ。Diploや、同じシカゴのKatie Got Bandzを手掛けたBlock On The Trakk等によるトラックもバッチリ。1曲客演のKreayshawnもはまってます。これまた同郷のGBE周辺の音とも違った仕上がりで面白い。

2013年2月4日月曜日

Curren$y『New Jet City』

2月3日はスーパーボウルの開催日。ミクステのリリース・ラッシュあるかなと思ってたら、そうでもなかった。これと、あとはLil Bくらいか。Datpiffが「ハーフタイムにBeyonceを聞く気にならないんなら、Spittaの新作を聞け」ってツイートしてたのは笑った。Jetlifeからの客演はYoung RoddyとTrademarkの2曲だけで、Rick RossやFrench Montanaなど他からのゲストが結構多め。JuvenileをFeatしてるのは驚いた。Trinidad Jamesは最近みんな入れてきますね。ミクステの内容は、まあいつも通りなんだけど、やっぱりすごく気持ちいい。Curren$yのこのレイドバック感は最高。ゆらりとスモーカー気取りながら聞いてる。


2013年1月22日火曜日

Rockie Fresh『Electric Highway』

年末年始に過去の傑作的なものばかり聞いていたせいか、今年に入ってからリリースされたミクステはイマイチなモノが多く感じていた中で、これはすごく良かった。The XXをサンプルしたりと、インディ・ロックに接近したエレクトロチックなプロダクションがカッコいい。MMGっぽさも殆ど感じさせず。以前Chief KeefにTwitterで「ストリートでRockie Fresh見たことあるやつ誰かいるか?HAHAHA」みたいな感じで挑発されてましたが、いいモノ作ってれば問題なし。

2013年1月9日水曜日

SKYFISH『GREEN SMOKER』

RUMIさんのライブDJとしても活動しているSKYFISHのMIX CDがBlacksmokerから登場。タイトルやジャケットの通り、BlacksmokerのMIX CDにしては珍しい快楽性の高い開放感のあるMIX。収録されてる曲も、あからさまに「ガンジャ」を連呼してるような曲ばかりで楽しい。レゲエだけでなく、ヒップホップやR&RやドラムンベースがさりげなくMIXされてるところも最高。クラブでのDJも聞いてみたいっす。