2014年2月4日火曜日

The Wolf Of Wall Street

サウダーヂ』にて田我流が「政治家が一番のギャングスタじゃねえかクソ!」と叫ぶシーンがあるが、この理屈で言えば今現在ウォール街で荒稼ぎしている金融マン達も、世界で有数のギャングスタだと言えるだろう。なにせ彼らは、違法すれすれのやり方で地球上の99%の人々から暴利を貪っている!このような観点から見れば、これまで『グッド・フェローズ』『カジノ』『ディパーテッド』といったギャング映画を撮ってきたスコセッシが、本作で実在の株式ブローカーの自伝を映画化したというのも頷ける。

実際、本作に出てくる金融マン達の行い(酒、女、ドラッグ、etc)は、ギャングのそれと全く見分けがつかない。主人公のジョーダン・ベルフォートは頻繁にドラッグを使用するが、その姿はギャング映画の名作『スカー・フェイス』の主人公トニー・モンタナと重なって見える。ゼロから成り上がったという意味でも、トニー・モンタナとジョーダン・ベルフォートには共通点を見いだせる。つまり、ギャング達のいるストリートとウォール街に本質的な違いなど無いのだ。

舞台はウォール街ではあるが、そこに「資本主義社会への批判」といったお決まりの批判はなく、ただただ人間の欲望や野心、成功と失敗といったドラマが描かれている。ジョーダン・ベルフォートの生き方に賛否あるのは間違いないが、ギャングやヤクザと同様に魅力的に感じる人も少なくないはず(ボクもその1人)。この魅力的なキャラクターに生命を吹き込んだディカプリオに敬意を(『ジャンゴ』と本作を観て感じたが、この人は少し嫌味な役の方が真価を発揮するように思える)。2014年、新たなトニー・モンタナの誕生だ。


2014年2月1日土曜日

American Hustle

「完全無欠」が謳い文句の詐欺師コンビがFBIに捕まり、司法取引で無罪を勝ち取るために同業者(詐欺師)4人の逮捕の手助けをするはめに。ところが作戦のターゲットは詐欺師からニュージャージーはカムデンの市長、現役の国会議員、更にはマイヤー・ランスキーラッキー・ルチアーノの右腕で、ユダヤ系ギャングの大物)の片腕だったギャングへとどんどん作戦はエスカレートし、深みにハマっていき…。

ザ・ファイター』と『世界にひとつのプレイブック』の主要キャストを揃えた本作はさながらデヴィッド・O・ラッセルの愛弟子達による演技合戦の様相を呈しており、映画のほぼ全編に渡ってスクリーン上で火花を散らし合っている。冒頭の主人公で詐欺師のアーヴィング(クリスチャン・ベイル)、FBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)、アーヴィングの愛人で相棒のシドニー(エイミー・アダムス)の3者による数分の絡みだけでも、ニヤニヤ笑いが止まらない。アクの強いキャラクターを共存させ、役者を活かした演出で「オスカーを取らせる監督」デヴィッド・O・ラッセルの手腕は、本作でも相変わらず冴え渡っている。

『世界にひとつの~』に引き続き本作もアカデミー賞の演技部門全て(主演男優・女優賞、助演男優・女優賞)にノミネートされているが(他に作品賞、監督賞、脚本賞等にもノミネート)、果たしてどれだけのオスカーを獲得できるか。