2013年4月8日月曜日

孤島の王





















ノルウェーのオスロ南部にあるバストイ島。そこには1900年から1953年までの間、犯罪を犯した少年を更生させるための施設があった。だがそこで行われていたのは更生とは名ばかりの、職員による締め付け、過酷な懲罰、性的虐待。そうした環境の中でも少年達は規律を乱すことなく耐えていたが、ある少年の自殺をきっかけとして、溜まっていた不満が爆発する。

同じような題材としては『大脱走』や『ショーシャンクの空に』などが有名だが、本作で描かれている少年達の人間としての尊厳や自由を希求する姿は、『レ・ミゼラブル』で革命を求め戦う人々の姿に重なる。もしくは、コミック版『V・フォー・ヴェンデッタ』のラストでもいい。組織化されてもなく、リーダーもなしに自然発生的に起こる暴動・蜂起に、人間として手放してはいけないものは何か、痛感する。憲法改正や徴兵制の検討など、きな臭いニュースが耳に入る今のこの国で、このような映画を観る価値は間違いなくある。

更生施設の院長役として、デヴィッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』でマルティン役を演じたステラン・スカルスガルドが出演しているが、その他はほぼ無名のキャストによるものらしい。個人的には、施設で優等生的な役割を務めていたオーラヴ役を演じたトロン・ニルセンという役者が印象に残った。