2012年10月13日土曜日

TOSHI蝮『Blue Cheeese』

「まず最初に  金の為のGAMEじゃない  尊敬を獲る為でもない」という宣言で高らかに幕を開ける、TOSHI蝮の1stソロアルバム。

去年リリースのMIX CD『THE CHRONIC-L』でも感じた通り、実力も個性もあるMCが群雄割拠状態のネオ東海の中ではクセがないというか、正統派のMCという印象。「現場叩き上げ」を自称するだけあり、確かなスキル、そして固いライミングが持ち味。しっかりリリックの聞こえる、小気味いいラップが耳に気持ちいい。

Ramza、C.O.S.A.、Mr.蓮、鷹の目など東海地方のトラックメイカーを多く起用した、多彩なトラックも良い。スモーキーな「I Just Wanna」「Empty」、ダークなエレクトロの「FREE B」、鷹の目による狂乱のパーティートラック「Green Cartain」、サンプル早回しのセンチメンタルな「RISK」等々。

ストリート、ドラッグ、ラップゲームなど言うならば「ありがち」なトピックが語られているが、TOSHI蝮のラップは、そこに現状への憤りに怒り、孤独感や切なさといった「剥き出しの感情」を感じられるのが、大きな魅力になっている。「I Just Wanna」での「裏で静かに握られる弱み そんな小さな世界 俺は抜け出す」というラインや、『THE CHRONIC-L』にも収録されていた「Empty」の「柵の世界GOOD-BYE  幸せに変えたいTONIGHT」というフックは、特に心に残った。

TOSHI蝮に限らずネオ東海のMCの言葉に感じる生々しさは、東京や他の地域のMCの言葉とは一味違うように思う。ひょっとすると他所にいる自分が「東海」という世界を理想化し、オリエンタリズムを感じているだけかもしれないけれど、それでももっと多くの人(日本語ラップリスナーなら尚更)に聞かれるべきだと思う。