2011年9月24日土曜日

『フランス暴動 移民法とラップ・フランセ』,  ロンドン暴動との類似性


珍しく真面目な本について。
いつもアホな本ばかり読んでるわけでは
ないですよ。いやマジで。

フランスで2005年に起こった大規模な暴動に
ついて、ラップ・フランセ(フランスのラップ)の
視点から考察した本です。

特にこの本を探していた訳でもなく何となく
買ってしまったのですが、なかなか良かった。
ちょっとテーマはズレてますが、音楽出版社
から出てる『GLOCAL BEATS』とも被る部分
もあります。

キーワードになってくるのは「郊外」。
「ゲットー」と言い換え可能かもしれません。
「バンリュー」と仏語では言うそうです。


このブログで書いたかどうか記憶が曖昧ですが、学生時代にフランス(というかパリ)に
旅行に行ったことがあります。その時に泊まったホテルがパリ郊外に位置していた
のですが、パリ中心部とはまるで別世界でした。

街自体の荒廃感、有色人種の比率の多さ、白人はいてもパリにいる白人とは雰囲気が
明らかに違う。フランス初日の夜にパリからホテルへ向かう電車に乗った際は、
生まれて初めて身の危険を感じました。結果的には何もありませんでしたが。

むしろアジア系の人は、すごい親近感をもって接してくれました。
深夜にボロボロのスーパーで会ったパキスタンから移住してきた人、元気かなあ。
「日本から来た」って言ったら「オウ、ドラゴンボール!」って言われました。

本題に戻ります。暴動のきっかけは、パリ郊外で警官に追われたアフリカ系の若者が、
逃げ込んだ先の変電所で感電死。それをきっかけとして暴動が発生。

その暴動に対して当時内務相のサルコジ(現フランス大統領!)が暴動の参加者を
「ゴロツキ」「社会のくず」呼ばわりし、暴動が更に激化。いかにもサルコジらしい・・・

この暴動の原因は、郊外に追いやられた移民や有色人種に対する社会からの根深い
人種的差別・貧困・警察による抑圧です。これらに対する不満が、件の事件をきっかけ
として爆発し、愉快犯を巻き込んで大規模な暴動に発展したというわけです。

そしてこうした状況を警告してきたのが、ラップ・フランセ。
全てのラップ・フランセがそういうものではないようですが、政治的な主張を
繰り返してきたラッパーがいたことは事実です。しかも暴動の10年前から!

名作『憎しみ』の監督マチュー・カソヴィッツのこんな言葉が本書に載せられています。

「様々な共同体の間にある哲学や開放的態度の欠如が、憎悪や憎しみを生み出している」

こうして見ると、1か月前のロンドン暴動と構造が良く似てますね。

フランスもイギリスも、こうした事態を抑えつけようとやっきになっているようですが、
この根っこの問題を解決しない限りはまた同じような事が起こるでしょう。
イギリスではキャメロンがSNSを制限すると言ったようですが、バカバカしいにも程がある。

最後に、97年に発表されたシングル。タイトルは『人種差別法に対する11分30秒』。
ゲットーに追いやられた「ゴロツキ」達による、「祖国」フランスへの抗議の叫び。