2012年4月14日土曜日

田我流 - B級映画のように2

















ようやく2011年3月11日以降の閉塞感や混乱(S.L.A.C.K.『この島の上で』のような)を打破する
モノが出てきたか、というのがこのアルバムを初めて聞いた時の感想。

アルバムのトレーラーで「アートは最後の砦」とラップした田我流の政府やメディアに対する批判は
手厳しい(「パニック・ゲーム」「愛のテーマ」「Straight Outta 138」)。stillichimiyaのポッセ・カット
「やべ~勢いですげー盛り上がる」にも「オレら生きてていいすか?お偉いさん」「笑えねえ世の中
なんか真っ平なんだよ」というリリックが出てくる。

田我流の批判の矛先はそこにとどまらず、政府やメディアの暴走を許した一般大衆にも向けられる
(「ハッピーライフ」)。更にはそこから深く掘り下げて、その一般大衆の中の「一人」である田我流
自身の心の深層(スリーブに書かれている「泥の河」)をえぐるかのような曲まである(「ロンリー」「Resurrection」「夜に唄えば」)。ここに震災とそれを巡る一連の騒動を経て、田我流がどれだけ
深く自己と対峙し葛藤していたかが垣間見れる。

そしてその葛藤の末に辿りついた答えは「最終的には自分達が立ち上がるしかないんだ」というもの(「Resurrection」「あの鐘を鳴らすのは、、俺」)。何も変わらないと嘆く前に、自分達で動いていこう
というメッセージ。田我流のこの心からの叫びは、震災後に様々な行動を起こしてきた全ての人に力
を与え、行動を躊躇していた人さえも奮い立たせる。特に「あの鐘を鳴らすのは、、俺」の高揚感には
震えが止まらない。

これは2011年3月11日を経験した全ての人が聞くべき作品。その上で何かしらの行動を起こす事が、
この傑作への最高のアンサーだと思う。