2012年3月10日土曜日

ECD - Don't Worry Be Daddy



















前作『TEN YEARS AFTER』はタイトル通り、ECDが現在から過去を振り返った作品でした。
「トニー・モンタナにはなれなかったんだ」「時は止まらない」「驚いたな五十で子持ちだよ」と、
アル中時代から2人の子供を持つパパにまでなったECDの自叙伝。そこから比べると今作の
『Don't Worry Be Daddy』は、『TEN YEARS AFTER』以降のECDの「今」を切り取った作品
となってます。

先行でPVが公開されていた「まだ夢の中」子供達の将来への思い・不安。「5to9」家事に仕事、
そして家事という慌しい日常と、その中にある幸せ。「ときどきあそこに」そんな慌しい日常の中
での、ちょっとした息抜き。「家庭の事情」家族のため金のために、やりたくない仕事をしながら
音楽を作っている自分の中の葛藤。家庭の事情やECDの心情がますます赤裸々に表現されて
ます。トラックの方もリズムマシンの破壊力や音のクリアさを聞くに、ツボイさんの長いMIX作業
の成果が確認できますね。

ハイライトは終盤の「Wasted Youth」「にぶい奴らのことなんか知らない」「Sight Seeing」の3曲。
「Wasted Youth」の「パーティナイト」はやめないという宣言、「にぶい奴らのことなんか知らない」
での「感度しかない」「ドアの向こうにまだ見ぬストーリー」というリリックは、「まだまだやってやる」
というECDからの意思表明。最後の「Sight Seeing」は7分超のサイケな大作。ECDのキャリアの
中でも、文句なしの最高傑作でしょう。

このアルバム単体でも楽しめますが、奥さんで写真家の植本一子さんの『働けECD』を読むと更に
理解が深まると思います。同じ生活・環境を一子さんの視点から眺めたエッセイで、このアルバム
と対になっているような。