ラベル MOVIE の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル MOVIE の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2014年6月16日月曜日

The East

DVDに収録されている特典映像で、監督・脚本のザル・バトマングリと主演・脚本を務めたブリット・マーリングが本作について「倫理観を揺さぶられる映画」と語っていたが、自分はそれほどでもなかった。自然環境や人命を軽視し、ひたすら利益のみを追求する企業や国家は「目には目を」式のテロまではいかずともそれ相応の罰は下されるべきだと思う。消費主義への抗議としてゴミの中から日々の食糧を得ようとまではいかないが、日々加速していくように思えるこのサイクルはどこかでストップしなければいけないだろう。個人的にはこうした問題提起より、むしろサスペンス映画としての完成度の高さに脱帽。環境テロリスト集団の生活の描写に当たって、ブリット・マーリングはこうしたグループやアナキストと生活を共にしたらしい。これらのシーンは、まるでCLASSのダイヤル・ハウスでの生活をそのまま映像化したようだ。劇中で挿入される印象的なピアノ曲は、監督の実弟であるロスタム・バトマングリ(USのインディ・バンド、ヴァンパイア・ウィークエンドのメンバー)によるもの。全世界的に新自由主義との戦いが燃え上がっている今、このような映画が公開されたことの意義は大きい。


2014年2月4日火曜日

The Wolf Of Wall Street

サウダーヂ』にて田我流が「政治家が一番のギャングスタじゃねえかクソ!」と叫ぶシーンがあるが、この理屈で言えば今現在ウォール街で荒稼ぎしている金融マン達も、世界で有数のギャングスタだと言えるだろう。なにせ彼らは、違法すれすれのやり方で地球上の99%の人々から暴利を貪っている!このような観点から見れば、これまで『グッド・フェローズ』『カジノ』『ディパーテッド』といったギャング映画を撮ってきたスコセッシが、本作で実在の株式ブローカーの自伝を映画化したというのも頷ける。

実際、本作に出てくる金融マン達の行い(酒、女、ドラッグ、etc)は、ギャングのそれと全く見分けがつかない。主人公のジョーダン・ベルフォートは頻繁にドラッグを使用するが、その姿はギャング映画の名作『スカー・フェイス』の主人公トニー・モンタナと重なって見える。ゼロから成り上がったという意味でも、トニー・モンタナとジョーダン・ベルフォートには共通点を見いだせる。つまり、ギャング達のいるストリートとウォール街に本質的な違いなど無いのだ。

舞台はウォール街ではあるが、そこに「資本主義社会への批判」といったお決まりの批判はなく、ただただ人間の欲望や野心、成功と失敗といったドラマが描かれている。ジョーダン・ベルフォートの生き方に賛否あるのは間違いないが、ギャングやヤクザと同様に魅力的に感じる人も少なくないはず(ボクもその1人)。この魅力的なキャラクターに生命を吹き込んだディカプリオに敬意を(『ジャンゴ』と本作を観て感じたが、この人は少し嫌味な役の方が真価を発揮するように思える)。2014年、新たなトニー・モンタナの誕生だ。


2014年2月1日土曜日

American Hustle

「完全無欠」が謳い文句の詐欺師コンビがFBIに捕まり、司法取引で無罪を勝ち取るために同業者(詐欺師)4人の逮捕の手助けをするはめに。ところが作戦のターゲットは詐欺師からニュージャージーはカムデンの市長、現役の国会議員、更にはマイヤー・ランスキーラッキー・ルチアーノの右腕で、ユダヤ系ギャングの大物)の片腕だったギャングへとどんどん作戦はエスカレートし、深みにハマっていき…。

ザ・ファイター』と『世界にひとつのプレイブック』の主要キャストを揃えた本作はさながらデヴィッド・O・ラッセルの愛弟子達による演技合戦の様相を呈しており、映画のほぼ全編に渡ってスクリーン上で火花を散らし合っている。冒頭の主人公で詐欺師のアーヴィング(クリスチャン・ベイル)、FBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)、アーヴィングの愛人で相棒のシドニー(エイミー・アダムス)の3者による数分の絡みだけでも、ニヤニヤ笑いが止まらない。アクの強いキャラクターを共存させ、役者を活かした演出で「オスカーを取らせる監督」デヴィッド・O・ラッセルの手腕は、本作でも相変わらず冴え渡っている。

『世界にひとつの~』に引き続き本作もアカデミー賞の演技部門全て(主演男優・女優賞、助演男優・女優賞)にノミネートされているが(他に作品賞、監督賞、脚本賞等にもノミネート)、果たしてどれだけのオスカーを獲得できるか。


2014年1月31日金曜日

The Place Beyond The Pines

前半のライアン・ゴズリング演じる腕利きのバイク乗りで銀行強盗のルークや、ブラッドリー・クーパー演じる名家の出の警察官・エイヴリーのエピソードは全て前段に過ぎず、後半の2人の子供の件で前半の伏線が回収されていく。個人的に最近コーマック・マッカーシーの著作を読んでいたこともあるが、こうした映画を見てしまうと、人間には生まれもった役割や運命といったものがあるのだろうかと考え込んでしまう。主演の2人はもとより、『ジャッキー・コーガン』や『アニマル・キングダム』での怪演が記憶に新しいベン・メンデルソーンや、『クロニクル』でのアンドリュー役が素晴らしかったデイン・デハーンも好演。特にデイン・デハーンについては、独特の繊細な雰囲気と存在感が圧倒的。今後の出演作も要注目。


2014年1月11日土曜日

GRAVITY

単なる宇宙空間からの脱出劇に収まらず、人類は何処から来たのか、人はどう生きるべきか、そもそも人生は生きるに値するものなのか、神とは何か、等の壮大なテーマが映画の柱にあり、それらを下支えする形で映画史上に残るレベルのVFXや音響効果が使用されている(その逆ではない)。NASAの管制室の声を演じた俳優やエンド・クレジットのスペシャル・サンクス欄に載っている人名を見れば、過去の映画へのリスペクトも明らか。『トゥモロー・ワールド』と本作で、アルフォンソ・キュアロンの名は映画史に永遠に刻まれたに違いない。


2013年4月8日月曜日

孤島の王





















ノルウェーのオスロ南部にあるバストイ島。そこには1900年から1953年までの間、犯罪を犯した少年を更生させるための施設があった。だがそこで行われていたのは更生とは名ばかりの、職員による締め付け、過酷な懲罰、性的虐待。そうした環境の中でも少年達は規律を乱すことなく耐えていたが、ある少年の自殺をきっかけとして、溜まっていた不満が爆発する。

同じような題材としては『大脱走』や『ショーシャンクの空に』などが有名だが、本作で描かれている少年達の人間としての尊厳や自由を希求する姿は、『レ・ミゼラブル』で革命を求め戦う人々の姿に重なる。もしくは、コミック版『V・フォー・ヴェンデッタ』のラストでもいい。組織化されてもなく、リーダーもなしに自然発生的に起こる暴動・蜂起に、人間として手放してはいけないものは何か、痛感する。憲法改正や徴兵制の検討など、きな臭いニュースが耳に入る今のこの国で、このような映画を観る価値は間違いなくある。

更生施設の院長役として、デヴィッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』でマルティン役を演じたステラン・スカルスガルドが出演しているが、その他はほぼ無名のキャストによるものらしい。個人的には、施設で優等生的な役割を務めていたオーラヴ役を演じたトロン・ニルセンという役者が印象に残った。

2013年3月22日金曜日

SHAME





















アイルランドからNYに移住し、仕事でも有能なブランドン。しかし彼は、仕事場でもポルノ画像を収拾し、自宅では娼婦を呼んでひたすらセックスをするセックス依存症を患っていた。そんなブランドンの元へ、自傷癖があり恋愛依存症でもある妹のシシーが転がり込んでくる。そこから、2人の生活が崩壊していく。

劇中でセックスや自慰のシーンは山程あるものの、そこにエロティシズムはなく、ただただ痛々しさが残るだけ。セックス依存症の現実を痛いほど描写している。監督はあのかの有名な俳優と同じ名前、スティーヴ・マックイーン。この監督にはこれからも注目していきたい。ブランドンを演じたマイケル・ファスベンダーは、台詞は少ないながらもセックス依存症の男を生々しく演じきっていてお見事。シシーを演じたキャリー・マリガンも同じく。

また、監督が映像作家なだけに、映像が全体を通してスタイリッシュなのも良かった。NYの夜の街や、シシーがバーで歌うシーンなど大変美しい。この美しい映像があるからこそ、セックスや自慰のシーンの惨めさがより際立つ。美しい映像と映画が扱っているテーマの惨めさ・エグさの2つの間の落差が、この映画の魅力かもしれない。

2013年3月18日月曜日

スリー・キングス





















湾岸戦争終結直後のイラク。実戦経験が殆どないトロイは、イラク軍の捕虜の尻から地図を発見する。それは、イラクがクウェートから盗んだ金塊の在りかを示した地図だった。トロイの上官であるアーチーはその地図を元にトロイ、チーフ、コンラッドの4人で金塊を探しに行く。金塊は無事見つけたものの、イラク軍による反フセイン派への弾圧を見た4人は、停戦協定を破ってイラク軍と戦闘してしまい・・・。

世界にひとつのプレイブック』のデヴィッド・O・ラッセルの99年監督作。アーチーを演じたジョージ・クルーニーはこの撮影中に監督を殴ったというほど現場は荒れていたようだが(デヴィッド・O・ラッセルは双極性障害を患っていて、その症状が現場で出てしまったらしい)、そんなハードな現場だったとは思えない快作。10年程前に一度TVで観て面白かった記憶があったが、もう一度観直してもやっぱり面白かった。

妻子あるアメリカの一般市民であるトロイの拷問シーンでは、湾岸戦争におけるアメリカの狙いであった石油をトロイに飲ませ、更にイラク兵が実はアメリカによって養成されたこと明らかにし、アメリカの虚飾を剥がす。このシーンは、この映画の政治的な立場を明確に表している。湾岸戦争から10年弱、911のテロの2年前という微妙な時期だからこそ作れた映画だと思う。今考えると、こんな過激な映画をよくTVで放送できたなと…。また、初めは使い様のない武器と思われていたフットボール爆弾の伏線の回収の仕方が見事で思わずニヤリ。

2013年3月16日土曜日

ジャンゴ 繋がれざる者





















奴隷だったジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が元歯科医で賞金稼ぎのシュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の手を借りながら、農園主で富豪のカルビン(レオナルド・ディカプリオ)から妻・ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を取り戻そうとするマカロニ・ウエスタン。タランティーノ、3年ぶりの監督映画。

パンフレットにある町山智浩さんの解説に、この映画は「ブラックスプロイテーション」だと書いてあったが、正にその通り。黒人を差別し、モノとしか見ていない人間は最終的には悲惨に撃ち殺され、カルビンの屋敷はラストに盛大に爆破される。爆破の後でサングラスをしてキメたジャンゴの姿は、ブラックスプロイテーション映画の主人公そのまま。

ジャンゴとシュルツを夜に襲撃しようとするKKKのような集団の不毛で下らない会話のシーンや、ド派手な銃撃シーンなど、タランティーノならではの演出も健在。映画後半にジョニー・トーの『エグザイル/絆』を思わせるような室内での銃撃シーンがあるが、これは一見の価値あり。

役者に関して言えば、アカデミー賞・助演男優賞を受賞したクリストフ・ヴァルツは当然素晴らしかったが、悪辣な農園主を演じたディカプリオも負けず劣らず良かった。個人的にはこちらに賞をあげたい。またサミュエル・L・ジャクソンが農園を仕切る執事・スティーブンを演じていたが、これは反則。誰かが言っていた通り、志村けんのコントに出てくる老人そのまま。喋る度に笑ってしまいそうだった。

2013年2月25日月曜日

世界にひとつのプレイブック





















妻が離れていったことが原因で精神を病んでしまった男と、夫に死なれたショックから立ち直れない女が、ダンス大会を目指して練習をしていく中で徐々に惹かれ合い、そしてどん底から再起していく様がコメディタッチで描かれる。

ただコメディと言いつつも、根本にあるテーマは「底辺から這い上がる人間」と「家族愛」の2つ。これは監督であるデヴィッド・O・ラッセルの前作『ザ・ファイター』と同じ。事前にラブコメ映画だという触れ込みを聞きつつもこの監督なら何かやってくれるだろうと思っていたので、予想通りで少しニヤリ。

素晴らしかったのは、ヒロインのティファニーを演じたジェニファー・ローレンス。精神が不安定で時にはクレイジーでありつつも、繊細で、チャーミングで、愛に溢れた人物であるティファニーを好演。主人公パットのランニング・コースに何度も出没するシーン、ダンスの練習に来なかったパットの家に殴りこんでいくシーン、やけっぱちになってテキーラをがぶ飲みするシーン、愛おしい瞬間が多すぎる。

あとパットの友達で精神病院から脱走を何度も繰り返すダニー役でクリス・タッカーが出演していて、あまりに久しぶりにスクリーンで観たので思わず我が目を疑った。『ラッシュアワー』以来か。

2013年2月18日月曜日

Raining Stones





















巨匠ケン・ローチによる、93年の作品。93年といえば、サッチャーによる弱者切り捨ての影響が色濃い時代。オアシスが出てきたバックグラウンドは、正にこうした状況。タイトルの「レイニング・ストーンズ」とは、マンチェスター地方の俗語で「石が降ってくるように辛い生活」という意味らしい。

今作の主人公ボブは失業中、正に「レイニング・ストーンズ」な生活を送っている。しかし敬虔なカトリックであるボブは、娘コリーンの聖餐式用のドレスは新しく立派なものにこだわる。法に触れる仕事を含め様々な仕事をするものの、元々が底辺の生活、金は貯まらない。最終的に、たかがドレスのため(しかしボブにとってはそれが大事)借金に手を出してしまう。当然のことながら返済は滞り、取立人が家に乗り込んでくる。家族を脅されたボブは怒り、取立人と格闘、結果として取立人は死んでしまう。ボブは罪を悔い、神父の家で罪を告白、警察署に出頭すると言う。しかしそれに対して、神父の答えは「ノー」。警察署には行かず、そのままにしておくことを勧める。そして借金の借用書を燃やしてしまう。

ボブのカトリックの教えに沿った行動を、神父が否定するという矛盾。信仰に沿って地獄のような生活に堕ちるか、法や信仰に背いてでも幸せに生きるのか。生きていくためにはボブは優しすぎ、信仰など邪魔なだけなのだろうか。聖餐式の途中、走っていくパトカーが気になって仕方ないボブ。おそらく一生罪を悔いながら生きていくのだろう。

貧しく厳しい生活を描写する中でも、ユーモアや主人公達への暖かい視線が含まれているがケン・ローチらしく微笑ましい。この前作である『リフ・ラフ』に続いて、80年代~90年代のイギリスの貧困層を秀逸に描いた傑作。

2012年10月28日日曜日

ARGO





















ゴーン・ベイビー・ゴーン』『ザ・タウン』に続く、ベン・アフレック監督作。この作品で完全に役者としてだけでなく、監督としてのベン・アフレックの評価も確固としたものになったのでは。早くもアカデミー賞の有力候補とのウワサもありますが、それも十分頷けるほどの力作。

前半は、架空の映画を製作する裏側を見せる中で、ハリウッドの映画製作の裏側を見せるという入れ子構造&セルフ・パロディ的な展開。この辺りは『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』を連想させる。映画プロデューサー役のアラン・アーキンと、特殊メイクの専門家役のジョン・グッドマンの2人がふてぶてしいハリウッドの業界人を好演。

舞台をイランに移した後半は一転して、カナダ大使公邸に半ば閉じ込められた6人の外交官の人間ドラマと、脱出作戦を巡るイラン革命防衛隊との緊迫したやり取りの連続というシリアスな展開。「映画を盛り上げよう」という狙いが透けて見える場面はいくつかあるものの、外交官を演じた6人の演技が素晴らしく非常に見応えあり。観客の焦燥感を煽る演出も上手い。

「ストーリーがイランを悪く描きすぎではないか」という批判もあるようですが、アメリカの外交のやり口も映画の中で説明されているのでそこは問題ないかと。また「ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)」がこの映画のテーマではないので、批判自体が的外れなようにも感じる。

2012年10月21日日曜日

The Ghost Writer





















以前Blu-rayで(人の家にて)鑑賞したものの、もう一度観たくなって今度はDVDで再度鑑賞。やっぱり、Blu-rayの方が断然映像は綺麗だな…当たり前だけど…。

登場人物、ロケーション、台詞や音楽といった映画の構成要素が最小限に抑えられた演出。ストーリーは淡々と、しかし緊張感をもって進んでいき、ラストのカタルシスへと向かう展開はお見事。ムダのない映画は観ていて心地いい。改めていい映画だなと。

イラク戦争後のイギリスを模した脚本も素晴らしい。ピアース・ブロスナン演じる元英国首相・ラングは間違いなくトニー・ブレアをモデルとしているし、軍事産業の会社として「ハリバートン社」ならぬ「ヘザートン社」が登場、ライス元国務長官そっくりの役者がラングと握手するシーンも。「もしも政治がこうした仕掛けで動いていたのだとしたら…」という、一種のパラレル・ワールドになっている。当然、監督・脚本をこなしたロマン・ポランスキーのイラク戦争に対する批判も込められてます。

しかし主演のユアン・マクレガーは、歳を取るごとにますますカッコよくなっていきますね。同年に公開された『人生はビギナーズ』も素晴らしかった。コンスタントに話題作に出演しているし、ここ数年で最も安定して活躍している俳優の一人ではないでしょうか。

2012年10月7日日曜日

アウトレイジ ビヨンド





















先代の会長を謀殺し、政界にまで影響を与える程に山王会を大きくした加藤(三浦友和)と石原(加瀬亮)。そんな加藤と石原のやり方に不満を持つ古参の山王会幹部。警察上層部の意向で、山王会を潰そうと目論むマル暴・片岡(小日向文世)。山王会と同盟関係にある、関西を拠点とする暴力団・花菱会。そして加藤と石原に組を潰され、子分と恋人を殺された昔気質のヤクザ、大友(ビートたけし)。

それぞれの狙いが複雑に絡み合うストーリーは、北野映画の影響を公言しているジョニー・トーの『黒社会』や、日本ヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』シリーズを想起させる(前作~今作と大友のキャラクターを見るに、『仁義なき戦い』の広能昌三と置き換えることは可能だと思う)。闇社会に張り巡らされた権謀術数の数々や、ドロドロの人間関係の描写を中心に映画は展開、そこに前作から引き継いだ目の覚めるような暴力シーンが加わる。映画としての完成度・見応え共に、今作が上だと思う。エンターテインメント性も、これまでの北野映画で最高レベル。最近観た映画の中では、ずば抜けて面白かった。

出演者で印象的だったのは小日向文世、松重豊、塩見三省、桐谷健太、新井浩文。小日向文世演じる片岡は、間違いなく今作(そして劇中で描かれる謀略の数々)の主役。その片岡のやり方を批判的に見つめる同じマル暴・繁田役の松重豊は、少ない台詞ながら渋い存在感。塩見三省は花菱会の幹部・中田を演じ、スクリーンに映るだけで観客を威圧。桐谷健太と新井浩文の2人は、若くて青いチンピラの嶋と小野を好演。この2人はもうちょっと観たかった。5人も挙げてしまったけどまだ挙げ足りないくらいで、そのくらい役者が光った映画だったと思う。また、『その男、凶暴につき』『HANA-BI』など北野映画でおなじみの白竜が、脇役ながら戻ってきたのも嬉しい。

2012年9月11日火曜日

a simple plan





















父親の墓参りの帰りに弟のハンク、兄のジェイコブ、2人の友人ルーの3人は、森の中で墜落した飛行機とその中に440万ドルもの大金を見つける。当初ハンクは渋るものの、ハンクが金を隠しほとぼりが冷めた後3人で山分けすることに。ハンクの妻サラも最終的にはこの簡単な計画(シンプル・プラン)に手を貸し、4人は大金を得るはずだったが・・・。

初めは金を盗んで隠すだけだったはずが罪が罪を呼び、更に思わぬ大金が元となってそれぞれが心に抱える欲望、疑心暗鬼、裏切りが露わとなって、4人はバラバラになっていく。幸せだったはずのハンクとサラの堅実な暮らしも、大金を目にしたことで乱されていく。一度夢を見てしまうと現状維持では満足できなくなるのは、人間の欲深さか。

オープニングの映像で「何か見た事あるなー」と思ってたら、1~2年くらい前の深夜にTVで放送してたやつでした(その時は最初30分くらい観て寝た)。監督はサム・ライミですが、得意のどぎついカメラワークを使わず淡々と撮っている感じ。彼の作品だと言われなければおそらく分からないでしょう。罪を重ねるたびに罪悪感に苛まれ自棄になっていく兄ジェイコブを、ビリー・ボブ・ソーントンが繊細に演じていて素晴らしいです。

2012年9月3日月曜日

最強のふたり(Intouchables)





















実話を元にした、全く相入れないはずの2人が心を通わせていくストーリー。映画では富豪の白人と貧困層の黒人という組み合わせになってますが、実際には黒人ではなくアラブ人だったみたい(プロダクションノートの最後に写真も載ってます)。

実話ベースとはいえ、『パリ20区、僕たちのクラス』や『預言者』を観てしまった後では、両者があっさり打ちとける展開にあまりリアリティを感じられず…。また登場人物の人種を変更した点には、製作側のストーリーを単純化しよう(当然、画的にも)という意図が垣間見えてどうにもモヤモヤ。

なかなか前評判が高かったので期待してたのですが、いまいち乗りきれないまま終了。フランス本国では相当ヒットしたみたいですが、どういう評価だったんだろうか。気になる。

あと個人的に、黒人の青年がクール&ザ・ギャングやアース・ウインド&ファイアーみたいなファンク好きっていう設定にものすごい引っかかった。いや、そこはラップ・フランセで。

2012年8月29日水曜日

Drugstore Cowboy





















シネマトゥデイ:『ドラッグストア・カウボーイ』の原作者ジェームズ・フォーグルが獄死

70歳を超えて刑務所に入っていたというのも驚きですが、犯した罪が「強盗」だったというのもまた凄いというか、救いようがないというか・・・。記事に出てくる地元警察の「彼は薬局強盗しか生きていくすべを知らないだろう」という証言が、劇中のどうしようもないジャンキー達の姿と重なって痛々しい。

1989年の映画ですが、鮮やかな薬局強盗の手口やドラッグによるバッドトリップを表現した映像は、今観てもスタイリッシュでカッコいい。むしろ『トレインスポッティング』(1996年)の方が、今では古臭く感じるような。ガス・ヴァン・サントの映画の中でも、ベストの1つではないでしょうか。

あと何と言っても、ジャンキーの神父役で出演のウィリアム・バロウズ。「(メタドンを使ったリハビリ治療は)ついついノルマを果たし過ぎていかん」「ヤクがあふれすぎて皆がヤク中に見える」etc、台詞がいちいち秀逸。マット・ディロンからバロウズへ「あんたは哲学者になるべきだったよ」と言うシーンは洒落てましたね。

2012年8月26日日曜日

A History of Violence





















田舎でダイナーを経営し、家族と仲睦まじく暮らすトム。そのトムが過去に背負った業がある事件をきっかけに暴かれていき、周囲の環境を激変させていく。

この作品を監督したクローネンバーグの発言(町山智浩さんのブログより)によると、製作・公開時の「アメリカの現状と無縁ではない」(公開は2005年・ブッシュ政権下)という。

確かに暴力が暴力を生む様は、正に9.11~アフガン~イラクへと突き進んだ当時のアメリカの姿そのまま。また劇中でトムの息子ジャックが、ギークであるにも関わらず学校内で暴力事件を起こし停学を受けるのは、誰しもがこの連鎖に巻き込まれる可能性を示唆しているように見える。

現在と過去、2つの顔を持つ複雑な男を演じ切ったヴィゴ・モーテンセンが素晴らしい。『ロード・オブ・ザ・リング』でのアラゴルン役を演じた人とは全く別人のよう。クローネンバーグの静かで穏やかな中に、冷酷さを持った映像・演出も抜群。

2012年8月19日日曜日

The Avengers





















今作への導線となってる5本の映画も全て観ました。その中では、『Captain America: The First Avenger』が個人的には一番好みでしたね(矢作俊彦さんはお怒りのようですが、まあ、色々と紆余曲折のあるキャラではあるので・・・)。

ストーリーやディティールについては、突っ込みだすとキリがない(そんなもんでしょう!)。ただ1つだけ、「政府が事態収拾のためNYに核ミサイル発射→アイアンマンが特攻スタイルで体を張って阻止」の流れがもろに『The Dark Knight Rises』のラストと被ってて、モヤっとしたのはボクだけではないはず。こういうのを見ると、「アメリカ人は核の事を『凄い威力の兵器』くらいにしか考えてない」って表現は間違いではないんだろうなと思います。核を安易に扱い過ぎやで。

あとCGの使い過ぎで、イマイチ現実味のない映像になってしまってるのは残念。せっかくのコミック実写化なのに。『The Dark Knight Rises』はその辺りのバランスを取って迫力ある映像に仕上げていただけに、もう少しやりようがあったのでは。もしくはどうせやるなら、『Transformers』シリーズくらいの無茶を。

今後は『Iron Man』『Thor』『Captain America』の続編、さらにその先には『The Avengers 2』が企画されてる模様(エンド・ロール通りであれば、あの方が再登場)。今作の出来には正直ガッカリでしたが、次に早くも期待してしまってるのは、おそらくボクが男だからでしょう。。

2012年8月14日火曜日

The Dark Knight Rises





















3部作の完結編。ただヒース・レジャー不在のせいか、『ダークナイト』の続編というよりも『バットマン・ビギンズ』の続編といった感じ。『ダークナイト』だけしか観てない人は、訳が分からなかったのでは。

キャストはクリストファー・ノーランの前作『インセプション』からトム・ハーディ、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤールが続けて出演。マイケル・ケイン、キリアン・マーフィ、『ビギンズ』に出てた渡辺謙を合わせたら、かなりキャスト被ってる(残りはディカプリオくらい?)。あと『パブリック・エネミーズ』でクリスチャン・ベールとマリオン、『裏切りのサーカス』でゲイリー・オールドマンとトムが共演してましたね。

所々で辻褄の合わない箇所や日本人からしたら???な箇所はありますが、そこはご愛嬌。『トランスフォーマー』みたく、娯楽映画の超大作として観るのが良いかと。ただし『ビギンズ』の予習は必須。あとどうせ観るならIMAXシアター推奨。アン・ハサウェイの美貌は大きなスクリーンで!