2012年8月26日日曜日

A History of Violence





















田舎でダイナーを経営し、家族と仲睦まじく暮らすトム。そのトムが過去に背負った業がある事件をきっかけに暴かれていき、周囲の環境を激変させていく。

この作品を監督したクローネンバーグの発言(町山智浩さんのブログより)によると、製作・公開時の「アメリカの現状と無縁ではない」(公開は2005年・ブッシュ政権下)という。

確かに暴力が暴力を生む様は、正に9.11~アフガン~イラクへと突き進んだ当時のアメリカの姿そのまま。また劇中でトムの息子ジャックが、ギークであるにも関わらず学校内で暴力事件を起こし停学を受けるのは、誰しもがこの連鎖に巻き込まれる可能性を示唆しているように見える。

現在と過去、2つの顔を持つ複雑な男を演じ切ったヴィゴ・モーテンセンが素晴らしい。『ロード・オブ・ザ・リング』でのアラゴルン役を演じた人とは全く別人のよう。クローネンバーグの静かで穏やかな中に、冷酷さを持った映像・演出も抜群。