『サウダーヂ』にて田我流が「政治家が一番のギャングスタじゃねえかクソ!」と叫ぶシーンがあるが、この理屈で言えば今現在ウォール街で荒稼ぎしている金融マン達も、世界で有数のギャングスタだと言えるだろう。なにせ彼らは、違法すれすれのやり方で地球上の99%の人々から暴利を貪っている!このような観点から見れば、これまで『グッド・フェローズ』『カジノ』『ディパーテッド』といったギャング映画を撮ってきたスコセッシが、本作で実在の株式ブローカーの自伝を映画化したというのも頷ける。
実際、本作に出てくる金融マン達の行い(酒、女、ドラッグ、etc)は、ギャングのそれと全く見分けがつかない。主人公のジョーダン・ベルフォートは頻繁にドラッグを使用するが、その姿はギャング映画の名作『スカー・フェイス』の主人公トニー・モンタナと重なって見える。ゼロから成り上がったという意味でも、トニー・モンタナとジョーダン・ベルフォートには共通点を見いだせる。つまり、ギャング達のいるストリートとウォール街に本質的な違いなど無いのだ。
舞台はウォール街ではあるが、そこに「資本主義社会への批判」といったお決まりの批判はなく、ただただ人間の欲望や野心、成功と失敗といったドラマが描かれている。ジョーダン・ベルフォートの生き方に賛否あるのは間違いないが、ギャングやヤクザと同様に魅力的に感じる人も少なくないはず(ボクもその1人)。この魅力的なキャラクターに生命を吹き込んだディカプリオに敬意を(『ジャンゴ』と本作を観て感じたが、この人は少し嫌味な役の方が真価を発揮するように思える)。2014年、新たなトニー・モンタナの誕生だ。