2014年6月16日月曜日

The East

DVDに収録されている特典映像で、監督・脚本のザル・バトマングリと主演・脚本を務めたブリット・マーリングが本作について「倫理観を揺さぶられる映画」と語っていたが、自分はそれほどでもなかった。自然環境や人命を軽視し、ひたすら利益のみを追求する企業や国家は「目には目を」式のテロまではいかずともそれ相応の罰は下されるべきだと思う。消費主義への抗議としてゴミの中から日々の食糧を得ようとまではいかないが、日々加速していくように思えるこのサイクルはどこかでストップしなければいけないだろう。個人的にはこうした問題提起より、むしろサスペンス映画としての完成度の高さに脱帽。環境テロリスト集団の生活の描写に当たって、ブリット・マーリングはこうしたグループやアナキストと生活を共にしたらしい。これらのシーンは、まるでCLASSのダイヤル・ハウスでの生活をそのまま映像化したようだ。劇中で挿入される印象的なピアノ曲は、監督の実弟であるロスタム・バトマングリ(USのインディ・バンド、ヴァンパイア・ウィークエンドのメンバー)によるもの。全世界的に新自由主義との戦いが燃え上がっている今、このような映画が公開されたことの意義は大きい。


2014年6月9日月曜日

Campanella『Vivid』

多彩なプロデューサー陣、ILLICIT TSUBOI氏によるMIX、MARIAやキエるマキュウの客演のインパクト…これらの要因が重なって、イマイチ「NEO TOKAI」色が見えてこなかったのが残念。個人的には、RAMZAやC.O.S.A.といったNEO TOKAIのプロデューサー陣と、交流が深いFla$hBackSの面々辺りだけで作った方が良かったんじゃないかと思う。客演もKNZZのみ、トラックのテイストも統一と、完璧にクオリティ・コントロールされたFebb『The Season』(同じWDSoundsからのリリース)と比べると、どうにも散らかった印象が拭えない。あと、これはこのアルバムに限った話ではないけど、日本語ラップはILLICIT TSUBOI氏に頼るのを止めて、それぞれ独自の音を追求した方が良いように思う。氏が関係すると、良くも悪くも同じような感触の音になってしまうので。


2014年5月12日月曜日

Arμ-2『Backward Decision for Kid Fresino』

ずいぶんと間の抜けた更新ですが、音楽は聞いてます。しかし、ももクロの曲を鎮座が作詞する時代が来るとは(中島みゆきもすごいけど)…。

OIL WORKSのArμ-2とFla$hBackSのKID FRESINOという組合せは、去年の『5O』を思わせる(奇しくも共にISSUGIが客演で参加)。ただArμ-2のトラックはOLIVE OILに比べ、もっとエレクトロやFlying Lotus、Brainfeeder辺りの感覚に寄った仕上がり。KID FRESINOのラップは、5lackよりもかなりイケイケで攻撃的。緩やかに曲線を描くトラックにラップが鋭角に突っ込んでいくようなイメージで、食い合わせとしてなかなか面白い。

Arμ-2はLeeというアーティストとのコラボ作でPitchforkで高評価、FebbのTweetを見る限りFla$hBackSも2ndアルバムの製作に入っている模様。両者とも今後の活躍が期待できそうで何より。2人でのライヴとかはやらないんでしょうか。


2014年2月4日火曜日

The Wolf Of Wall Street

サウダーヂ』にて田我流が「政治家が一番のギャングスタじゃねえかクソ!」と叫ぶシーンがあるが、この理屈で言えば今現在ウォール街で荒稼ぎしている金融マン達も、世界で有数のギャングスタだと言えるだろう。なにせ彼らは、違法すれすれのやり方で地球上の99%の人々から暴利を貪っている!このような観点から見れば、これまで『グッド・フェローズ』『カジノ』『ディパーテッド』といったギャング映画を撮ってきたスコセッシが、本作で実在の株式ブローカーの自伝を映画化したというのも頷ける。

実際、本作に出てくる金融マン達の行い(酒、女、ドラッグ、etc)は、ギャングのそれと全く見分けがつかない。主人公のジョーダン・ベルフォートは頻繁にドラッグを使用するが、その姿はギャング映画の名作『スカー・フェイス』の主人公トニー・モンタナと重なって見える。ゼロから成り上がったという意味でも、トニー・モンタナとジョーダン・ベルフォートには共通点を見いだせる。つまり、ギャング達のいるストリートとウォール街に本質的な違いなど無いのだ。

舞台はウォール街ではあるが、そこに「資本主義社会への批判」といったお決まりの批判はなく、ただただ人間の欲望や野心、成功と失敗といったドラマが描かれている。ジョーダン・ベルフォートの生き方に賛否あるのは間違いないが、ギャングやヤクザと同様に魅力的に感じる人も少なくないはず(ボクもその1人)。この魅力的なキャラクターに生命を吹き込んだディカプリオに敬意を(『ジャンゴ』と本作を観て感じたが、この人は少し嫌味な役の方が真価を発揮するように思える)。2014年、新たなトニー・モンタナの誕生だ。


2014年2月1日土曜日

American Hustle

「完全無欠」が謳い文句の詐欺師コンビがFBIに捕まり、司法取引で無罪を勝ち取るために同業者(詐欺師)4人の逮捕の手助けをするはめに。ところが作戦のターゲットは詐欺師からニュージャージーはカムデンの市長、現役の国会議員、更にはマイヤー・ランスキーラッキー・ルチアーノの右腕で、ユダヤ系ギャングの大物)の片腕だったギャングへとどんどん作戦はエスカレートし、深みにハマっていき…。

ザ・ファイター』と『世界にひとつのプレイブック』の主要キャストを揃えた本作はさながらデヴィッド・O・ラッセルの愛弟子達による演技合戦の様相を呈しており、映画のほぼ全編に渡ってスクリーン上で火花を散らし合っている。冒頭の主人公で詐欺師のアーヴィング(クリスチャン・ベイル)、FBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)、アーヴィングの愛人で相棒のシドニー(エイミー・アダムス)の3者による数分の絡みだけでも、ニヤニヤ笑いが止まらない。アクの強いキャラクターを共存させ、役者を活かした演出で「オスカーを取らせる監督」デヴィッド・O・ラッセルの手腕は、本作でも相変わらず冴え渡っている。

『世界にひとつの~』に引き続き本作もアカデミー賞の演技部門全て(主演男優・女優賞、助演男優・女優賞)にノミネートされているが(他に作品賞、監督賞、脚本賞等にもノミネート)、果たしてどれだけのオスカーを獲得できるか。


2014年1月31日金曜日

The Place Beyond The Pines

前半のライアン・ゴズリング演じる腕利きのバイク乗りで銀行強盗のルークや、ブラッドリー・クーパー演じる名家の出の警察官・エイヴリーのエピソードは全て前段に過ぎず、後半の2人の子供の件で前半の伏線が回収されていく。個人的に最近コーマック・マッカーシーの著作を読んでいたこともあるが、こうした映画を見てしまうと、人間には生まれもった役割や運命といったものがあるのだろうかと考え込んでしまう。主演の2人はもとより、『ジャッキー・コーガン』や『アニマル・キングダム』での怪演が記憶に新しいベン・メンデルソーンや、『クロニクル』でのアンドリュー役が素晴らしかったデイン・デハーンも好演。特にデイン・デハーンについては、独特の繊細な雰囲気と存在感が圧倒的。今後の出演作も要注目。


2014年1月28日火曜日

Step Brothers『Lord Steppington』

昨今の日本語ラップはサウンド面での目まぐるしい刷新が目立つが、去年のFla$hBackSが証明したように、必ずしも新しいサウンド=カッコよさとは限らない。同僚(アイドル大好き青年、日本語ラップはほとんど聞かない)が、Fla$hBackSのことを「オールドスクール」と評していたのは結構客観的な意見だと思う。要するに、カッコいいビートとラップがあれば問題ないのだ。AlchemistとEvidenceという旧知の2人が組んだこのアルバムにも、同じことが言えるように思う。Alchemistによる骨太のビートに、Evidenceを始めAction Bronson、Styles P、Roc Marciano等の手練のラップが乗るだけで十分。それ以上余計なものは必要なし。XXL Magazineがこのアルバムを、オリジナリティは「L」にも関わらず、総合評価として「XL」としていたのも頷ける。ベテランの2人による、納得のクラシック。