Qeticのインタビューによると製作当時は、精神的に混乱していた様子。そのような精神状態を反映してか、地球を離れたサン・ラの元へ駆け足で向かっているようなコズミックでスペーシーな前作『Cosmogramma』から一転、今作は内省的な、内なる宇宙を旅するようなアルバムとなっている。
前作の細胞が増殖するように音が重なって空間を埋め尽くすようなサウンドは、そこから逆行するかのように音の隙間・空間を活かしたプロダクションや、アンビエントなトラックへと方向転換。この辺りは、製作中によく聞いていたというジェントル・ジャイアントやソフト・マシーンなどのサイケ・プログレ、CAN、ポーティスヘッド等のサウンドを上手く取り込んだなという印象。
こうした今作での新しい作風を象徴しているのは、客演にエリカ・バドゥを迎えた「See Thru To U」。無骨でトライバルなドラムとパーカッションの上で、エリカ・バドゥの声が曲に神秘的な雰囲気を与えている。そしてアルバムが終盤に近づくにつれ、ビートの目立たない浮遊感のある曲が増えていく。正にポーティスヘッドな「Hunger Feat. Nikki Randa」、アンビエントな白昼夢「Phantasm Feat. Laura Darlington」等。最後は緩やかに空へと浮かんでいくような、「Me Yeasterday//Corded」「Dream To Me」で幕を閉じる。このようなアルバム全体の構成・流れも素晴らしい。
前作のような時代のうねりを感じさせる革新的なビートはないものの、曲単位の緻密さで言えば今作の方が上。Flying Lotusの、「トラックメイカー」というよりも「ミュージシャン」としての成熟を感じさせる。
2012年9月28日金曜日
2012年9月27日木曜日
The Jon Spencer Blues Explosion『Meat and Bone』
JSBX名義では10年振り、Blues Explosion名義の『Damage』を含めても8年振りとなる新作 。JSBXとしての前作『Plastic Fang』は普通に良いR&Rアルバムだと個人的には思ったものの、ストロークスやホワイト・ストライプスが台頭した「R&Rリバイバル」真っ只中でのリリースだったせいか、メディアから「柳の下のドジョウ」狙いだなんだと叩かれ、そうした批判にうんざりした様子のジョンのインタビューを読んだ記憶もあり。Pitchforkを確認してみたら、「2.5」点の低評価で「farewell album」とまで言われてる。
ただ20年以上になるキャリア中、「R&Rリバイバル」の10年以上前から、彼らはずっとブルースとR&Rのビルド&スクラップをやってきた訳で。ジョンのサイドプロジェクト「Heavy Trash」(アメリカーナ好きにはお勧め)や過去作のリイシューを挟んでの今作も、その根本に一切ブレは無し。タイトルそのままにスピーカーから吐き出される、肉と骨だけのぶっきらぼうな音楽。この変わらなさに、彼らの自負や意地、そしてプライドを感じる。枯れた白髪混じりのオヤジ達による、ブルースの爆発ワンスアゲイン。
ただ20年以上になるキャリア中、「R&Rリバイバル」の10年以上前から、彼らはずっとブルースとR&Rのビルド&スクラップをやってきた訳で。ジョンのサイドプロジェクト「Heavy Trash」(アメリカーナ好きにはお勧め)や過去作のリイシューを挟んでの今作も、その根本に一切ブレは無し。タイトルそのままにスピーカーから吐き出される、肉と骨だけのぶっきらぼうな音楽。この変わらなさに、彼らの自負や意地、そしてプライドを感じる。枯れた白髪混じりのオヤジ達による、ブルースの爆発ワンスアゲイン。
2012年9月23日日曜日
16FLIP aka Killwheel『180atomosphere 4』
DNCのDJ、16FLIP aka Killwheelの『180atomosphere』シリーズ第4弾。実際のジャケットは下の画像と鏡対称になってます(ちゃんとした画像が見つからなかったので・・・)。side1と2に分かれていて、side1はUSのラップ、side2はソウルやR&Bの甘い曲が中心の構成。全部で4曲収録されてる16FLIPのエクスクルーシヴなビートもばっちり。MIXの裏ジャケにも書かれててManhattan Recordsさんもツイートしてましたが、来月16FLIPのビートLPが250枚限定でリリースみたい。こ、こっちも欲しい・・・。
2012年9月20日木曜日
PUNPEE『Movie On The Sunday』
PUNPEEのディスクユニオン限定MIX CD。ジャケットの通り「映画」がテーマになっていて、曲名にも『2001年宇宙の旅』や『アバター』『ブレードランナー』のパロディあり。オリジナル曲もそのテーマ通り、名画座の暗がりで古いフィルムを眺めているような、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる曲が多い。個人的には「離脱 feat. Gapper」、「アイデン&テティ feat. B.I.G JOE & 仙人掌」(みうらじゅん!)、「Drive In Theater feat. MC KOMICKLINICK」の3曲がお気に入り。
オリジナル曲の他にREMIXを3曲収録(Anarchy「Rockstar」のREMIXが最高!)で、Interlude(というよりは小ネタ?)も多め。なので印象としては、最近BESやA-THUGがリリースした類のMIXというよりも、一昨年に限定でリリースした『Mixed Bizness』のようなDJ MIXに近い。PUNPEEのDJを聞いた事ある人なら分かると思うけど、サンプラーやターンテーブルで遊んでいるような、良い意味で「何でもアリ」な感覚がとにかく楽しい1時間とちょっと。あと、映画と同じで「Endroll」は最後まで確認しよう!
オリジナル曲の他にREMIXを3曲収録(Anarchy「Rockstar」のREMIXが最高!)で、Interlude(というよりは小ネタ?)も多め。なので印象としては、最近BESやA-THUGがリリースした類のMIXというよりも、一昨年に限定でリリースした『Mixed Bizness』のようなDJ MIXに近い。PUNPEEのDJを聞いた事ある人なら分かると思うけど、サンプラーやターンテーブルで遊んでいるような、良い意味で「何でもアリ」な感覚がとにかく楽しい1時間とちょっと。あと、映画と同じで「Endroll」は最後まで確認しよう!
2012年9月19日水曜日
ZAZEN BOYS『すとーりーず』
ここ数年のZAZEN BOYSの活動は、熱狂的なファンから見ても「行き詰まり」を感じさせるものだったように思う。「行き詰まり」の理由としては、変拍子を多用した複雑なバンドアンサンブルからグル―ヴを生み出すという基本的な方向性が、マンネリに陥っていた事。そしてそのマンネリを打破しようと大胆にハウスを取り入れた『Ⅳ』の曲群も、何かバンドとして腹が決まっていないかのような、中途半端なものだった事。
今作『すとーりーず』は、そうした停滞感へのバンドからの明確な回答になっている。「HIMITSU GIRL~」「RIFFMAN」に代表されるゴツゴツしたリフからなる岩のような音塊は、「Honnoji」「Weekend」を経由してカッティングが冴え渡る「サイボーグのオバケ」「泥沼」のような、よりシャープでソリッドな形に。粘っこいグル―ヴの「ポテトサラダ」「気がつけばミッドナイト」も素晴らしい。何かバンドの目指す所が、結成当初から影響を公言していたレッド・ツェッペリンから、P-FUNKや向井秀徳のルーツの1つであるプリンスのようなファンクへと変化したような印象。また『Ⅳ』から新たに取り入れたハウスの要素は、バンドサウンドを適度にミックスさせた「すとーりーず」へ。ハウスの音を吸収し、ZAZENの世界へと昇華させている。
加えてニューウェイブを思わせる「はあとぶれいく」「破裂音の朝」では、NUMBER GIRL時代のようなポップなメロディを解禁。ZAZENではおそらく意図的に封印されてきたけれど、向井秀徳は本当にいい曲を書く。舵を切り直し、バランスを整え、過去の呪縛からも解放されたアルバムは、ギターリフとシンセが絡まる中で向井節がこだまする「天狗」で大団円。バンドのやり切ったという感触を感じる、問答無用の最高傑作。
今作『すとーりーず』は、そうした停滞感へのバンドからの明確な回答になっている。「HIMITSU GIRL~」「RIFFMAN」に代表されるゴツゴツしたリフからなる岩のような音塊は、「Honnoji」「Weekend」を経由してカッティングが冴え渡る「サイボーグのオバケ」「泥沼」のような、よりシャープでソリッドな形に。粘っこいグル―ヴの「ポテトサラダ」「気がつけばミッドナイト」も素晴らしい。何かバンドの目指す所が、結成当初から影響を公言していたレッド・ツェッペリンから、P-FUNKや向井秀徳のルーツの1つであるプリンスのようなファンクへと変化したような印象。また『Ⅳ』から新たに取り入れたハウスの要素は、バンドサウンドを適度にミックスさせた「すとーりーず」へ。ハウスの音を吸収し、ZAZENの世界へと昇華させている。
加えてニューウェイブを思わせる「はあとぶれいく」「破裂音の朝」では、NUMBER GIRL時代のようなポップなメロディを解禁。ZAZENではおそらく意図的に封印されてきたけれど、向井秀徳は本当にいい曲を書く。舵を切り直し、バランスを整え、過去の呪縛からも解放されたアルバムは、ギターリフとシンセが絡まる中で向井節がこだまする「天狗」で大団円。バンドのやり切ったという感触を感じる、問答無用の最高傑作。
2012年9月18日火曜日
ST 2 Lettaz『R.E.B.E.L.』
G-SIDE解散しちゃいましたね・・・。日本では異例のフィジカル・リリースがあって注目もされただけに、余計に残念です。とか言ってるうちにG-SIDEの片割れ、ST 2 Lettazがソロ作リリース。プロデュースはおなじみBlock Beattaz。ZillaやKristmasも客演で参加。7曲25分と短めですが、ジャケも内容もバッチリっす。
2012年9月14日金曜日
Waka Flocka Flame『Salute Me Or Shoot Me 4 (Banned From America)』
Waka Flockaの新作。客演が沢山あったのと2ndアルバムが出たので気にしてませんでしたが、ミクステのリリースは今年初でしょうか。2曲目「Death Of Me」でのWakaの咆哮にテンション上がる。刃物ぶん回してるような凶悪なトラックが大半なのも、個人的に嬉しい。Wakaはやっぱりこうでないと。終盤の「I Got Em feat. Trae Tha Truth」「Zip Em Up feat. Wooh Da Kid, Fetti Gang & D-Bo」「Murda feat. Bo Deal & Chief Keef」の3連打はさながら絨毯爆撃。
ラベル:
US RAP,
Waka Flocka Flame
2012年9月11日火曜日
a simple plan
父親の墓参りの帰りに弟のハンク、兄のジェイコブ、2人の友人ルーの3人は、森の中で墜落した飛行機とその中に440万ドルもの大金を見つける。当初ハンクは渋るものの、ハンクが金を隠しほとぼりが冷めた後3人で山分けすることに。ハンクの妻サラも最終的にはこの簡単な計画(シンプル・プラン)に手を貸し、4人は大金を得るはずだったが・・・。
初めは金を盗んで隠すだけだったはずが罪が罪を呼び、更に思わぬ大金が元となってそれぞれが心に抱える欲望、疑心暗鬼、裏切りが露わとなって、4人はバラバラになっていく。幸せだったはずのハンクとサラの堅実な暮らしも、大金を目にしたことで乱されていく。一度夢を見てしまうと現状維持では満足できなくなるのは、人間の欲深さか。
オープニングの映像で「何か見た事あるなー」と思ってたら、1~2年くらい前の深夜にTVで放送してたやつでした(その時は最初30分くらい観て寝た)。監督はサム・ライミですが、得意のどぎついカメラワークを使わず淡々と撮っている感じ。彼の作品だと言われなければおそらく分からないでしょう。罪を重ねるたびに罪悪感に苛まれ自棄になっていく兄ジェイコブを、ビリー・ボブ・ソーントンが繊細に演じていて素晴らしいです。
2012年9月8日土曜日
Mala『Mala in Cuba』
前述の通り自分が想像した「1+1=2」式でなく、Malaが正にキューバ音楽と「セッション」している。ロンドンやブリストルのグレーな空でもなく、ハバナの真っ青な海でもない、UKベースミュージックとキューバ音楽のフュージョン。ECDが『ECDIARY』でサンプラー+生ドラムと組み合わせが意外とやりやすかったと言っていた通り、「デジタルな音+生演奏」という方式は、組み合わせ次第でもっと大きな可能性がありそう。少なくともそう思わせるような音がここにある。最後のダブ、スカが混ざった中に女性Voの歌声が入っていく「Noches Sueños feat. Danay Suarez」は、溜息出るほど美しい…。
2012年9月5日水曜日
Talib Kweli & Z-Trip『Attack The Block』
『Attack The Block』ってタイトル見て「イギリス映画のアレかな~」「渋谷でやってたけど見逃したな~」とか思いつつ1曲目の「Attack The Block!!!」再生したら、グライム風のビートにまさかのファスト・ラップ。「うおおおおTalib Kweli、ここへ来て新境地やんか」とか興奮してたら、グライム風の曲はその1曲だけでした!でも他の曲も当たり前にカッコいいのはさすがと唸る。Curren$yとKendrick Lamarとの曲も収録予定だったみたいですが、流れた模様。面白そうな組合せだったので残念。
2012年9月3日月曜日
最強のふたり(Intouchables)
実話を元にした、全く相入れないはずの2人が心を通わせていくストーリー。映画では富豪の白人と貧困層の黒人という組み合わせになってますが、実際には黒人ではなくアラブ人だったみたい(プロダクションノートの最後に写真も載ってます)。
実話ベースとはいえ、『パリ20区、僕たちのクラス』や『預言者』を観てしまった後では、両者があっさり打ちとける展開にあまりリアリティを感じられず…。また登場人物の人種を変更した点には、製作側のストーリーを単純化しよう(当然、画的にも)という意図が垣間見えてどうにもモヤモヤ。
なかなか前評判が高かったので期待してたのですが、いまいち乗りきれないまま終了。フランス本国では相当ヒットしたみたいですが、どういう評価だったんだろうか。気になる。
あと個人的に、黒人の青年がクール&ザ・ギャングやアース・ウインド&ファイアーみたいなファンク好きっていう設定にものすごい引っかかった。いや、そこはラップ・フランセで。
2012年9月2日日曜日
LV『SEBENZA』
ロンドンの3人組ユニット、LVの2nd(1stは未聴)。新宿のタワレコで見かけて気になったものの、試聴が出来ず。買うかどうか迷ったんですが、リリースがHyperdubからだったのとライナーがDISC SHOP ZEROの飯島さんだったのが決め手で購入。バッチリでした。Hyperdub最高。
ダークなエレクトロ+ダブステップ+アフロビートな闇鍋トラックに、LVのメンバー1人の祖国である南アフリカのMC達がフィーチャーされてます。こいつらがとにかくカッコいい!訛りのある英語(+南アフリカの他の公用語?)や、USやUKとは違った独特の粘り気のあるフロウが強烈で耳に残ります。日本のMCもこんな風にフィーチャーされれば面白いと思うんですが、やっぱり英語じゃないと難しいか。
ダークなエレクトロ+ダブステップ+アフロビートな闇鍋トラックに、LVのメンバー1人の祖国である南アフリカのMC達がフィーチャーされてます。こいつらがとにかくカッコいい!訛りのある英語(+南アフリカの他の公用語?)や、USやUKとは違った独特の粘り気のあるフロウが強烈で耳に残ります。日本のMCもこんな風にフィーチャーされれば面白いと思うんですが、やっぱり英語じゃないと難しいか。
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