2013年2月27日水曜日

Astro AKA The Astronomical Kid『Deadbeats & Lazy Lyrics』

最近聞いて面白かったミクステはコレ。NYはブルックリンのラッパー、Astroの新作。公式サイトのバイオグラフィを見てると、ラキムやKRS-One、RUN DMCなんかのリリックを研究していたらしく、自ら「diehard old school rap fanatic(頑固なオールド・スクール・ラップの狂信者)」と言ってますね。確かに一聴して分かる通り、トラックもラップもかなりオールド・スクールからの影響を感じる。ただどこかオールド・スクールには無い新しさも感じて、それがまた面白い。

2013年2月26日火曜日

Iceage『You're Nothing』

デンマークの4人組パンク/ハードコア・バンド、Iceageの2nd。レーベルはアメリカのMatadorから。ちょっと意外な組み合わせ。生き急いでいるかのような疾走感、金属片を擦りつけているようなギターサウンド、虚無感を感じさせるヴォーカルの叫び。彼らの1stに感じた魅力はそのままに、更にパワーアップしたような。タイトル曲でありアルバムのラスト曲である「You're Nothing」のコーラス部分で、爆走するバンドの演奏にのせて「You're Nothing(お前には何もない)」とやけっぱちに繰り返し叫ぶ様は、何か胸に込み上げてくるものがある。是非日本でライブを見てみたい。


2013年2月25日月曜日

世界にひとつのプレイブック





















妻が離れていったことが原因で精神を病んでしまった男と、夫に死なれたショックから立ち直れない女が、ダンス大会を目指して練習をしていく中で徐々に惹かれ合い、そしてどん底から再起していく様がコメディタッチで描かれる。

ただコメディと言いつつも、根本にあるテーマは「底辺から這い上がる人間」と「家族愛」の2つ。これは監督であるデヴィッド・O・ラッセルの前作『ザ・ファイター』と同じ。事前にラブコメ映画だという触れ込みを聞きつつもこの監督なら何かやってくれるだろうと思っていたので、予想通りで少しニヤリ。

素晴らしかったのは、ヒロインのティファニーを演じたジェニファー・ローレンス。精神が不安定で時にはクレイジーでありつつも、繊細で、チャーミングで、愛に溢れた人物であるティファニーを好演。主人公パットのランニング・コースに何度も出没するシーン、ダンスの練習に来なかったパットの家に殴りこんでいくシーン、やけっぱちになってテキーラをがぶ飲みするシーン、愛おしい瞬間が多すぎる。

あとパットの友達で精神病院から脱走を何度も繰り返すダニー役でクリス・タッカーが出演していて、あまりに久しぶりにスクリーンで観たので思わず我が目を疑った。『ラッシュアワー』以来か。

2013年2月23日土曜日

DJ Highschool『WDSOUNDS EXCLUSIVE MIX』

BBHやSonetorious名義での活動、D.U.O. TOKYOのバックDJ等でおなじみの、DJ HighschoolによるMIX。本来の発売日は27日ですが、原宿のBACKWOODS BOROUGHで先行販売してるのをゲット。ちなみにBACKWOODS BOROUGHでボクがしゃべった店員(店長?)さんもヒップホップ好きで、池袋bedなんかに時々出没しているみたい。親近感。

肝心の内容はというと、ポップスを序盤と終盤に挟みつつも基本はやはりヒップホップ。ただヒップホップの中でもゴリゴリの黒いブツではなく、レイドバックした感じの曲が多め。全体に漂う、聞きながら散歩にでも繰り出したい雰囲気が最高です。このままのムードでフェイドアウトしていくかと思いきや、それを自らぶち壊すかのように、最後はハードコアで締め。これはアガる。これぞWDsounds。


2013年2月20日水曜日

KILLah BEEN『公開』

16FLIP、BLYY、PUNPEE等による黒くタイトなビートに、時折ブルースのような哀愁を漂わせるリリカルなラップ。客演はなし。同様の作風のラッパーとは一線を画すかのごとく、skitのように挟まれる不穏なトラック。こうした要素だけでも、十二分に最高のラップ・アルバムになっている。

しかし、このアルバムをより特別なものにしているのは、何といっても「囚 - Under Parole's Demo」。KILLah BEEN自身が体験した2年間に及ぶ刑務所暮らしの始まりと終わりが、ラップというよりもポエトリー・リーディングのような形で表現される26分間の大作(こうした作風は、TBHの「We Must Learn」や「路上」を思わせる)。

淡々としたビートの上で、刑務所の悲惨な暮らしやその中でのKILLah BEENの心境が言葉の海となって綴られる。その様はまるで映画やドキュメンタリーのよう(それこそ『預言者』を思わせる)。聞いていく内にズブズブとはまっていき、最後には曲の世界に飲み込まれる。今作唯一のメロウな瞬間である終盤になると、自然と目に涙が溢れてくる。圧倒的な1曲。キラキラと光り輝くFla$hBackSとは対極にあるような重い感触。でも、これもヒップホップというジャンルの持つ魅力の1つ。


2013年2月18日月曜日

Raining Stones





















巨匠ケン・ローチによる、93年の作品。93年といえば、サッチャーによる弱者切り捨ての影響が色濃い時代。オアシスが出てきたバックグラウンドは、正にこうした状況。タイトルの「レイニング・ストーンズ」とは、マンチェスター地方の俗語で「石が降ってくるように辛い生活」という意味らしい。

今作の主人公ボブは失業中、正に「レイニング・ストーンズ」な生活を送っている。しかし敬虔なカトリックであるボブは、娘コリーンの聖餐式用のドレスは新しく立派なものにこだわる。法に触れる仕事を含め様々な仕事をするものの、元々が底辺の生活、金は貯まらない。最終的に、たかがドレスのため(しかしボブにとってはそれが大事)借金に手を出してしまう。当然のことながら返済は滞り、取立人が家に乗り込んでくる。家族を脅されたボブは怒り、取立人と格闘、結果として取立人は死んでしまう。ボブは罪を悔い、神父の家で罪を告白、警察署に出頭すると言う。しかしそれに対して、神父の答えは「ノー」。警察署には行かず、そのままにしておくことを勧める。そして借金の借用書を燃やしてしまう。

ボブのカトリックの教えに沿った行動を、神父が否定するという矛盾。信仰に沿って地獄のような生活に堕ちるか、法や信仰に背いてでも幸せに生きるのか。生きていくためにはボブは優しすぎ、信仰など邪魔なだけなのだろうか。聖餐式の途中、走っていくパトカーが気になって仕方ないボブ。おそらく一生罪を悔いながら生きていくのだろう。

貧しく厳しい生活を描写する中でも、ユーモアや主人公達への暖かい視線が含まれているがケン・ローチらしく微笑ましい。この前作である『リフ・ラフ』に続いて、80年代~90年代のイギリスの貧困層を秀逸に描いた傑作。

2013年2月13日水曜日

Toro Y Moi『Anything In Return』

これまでチルウェイヴと括られてるアーティストは試聴してもいまいちピンとくるものがなかったというか、はっきり言って「これはアカン」と思うものしかなかった。How To Dress WellやWashed Outは何回聞いても全然良さが分からない。でも今作は聞いた瞬間、一気に音やイメージが頭の中に入り込んできた(Toro Y Moiはこれまで試聴したことすらなかった…反省…)。全編を通してダンサブルで、多彩な音が幻想的な空間を作り出してる。そしてとにかくメロディが抜群にいい。難しいジャンルの括りに入れずにポップ・アクトとして紹介しても、全く問題ないと思う。またディスコチックな曲を聞いてると、Friendly Firesはこれをやれば良かったんじゃないかみたいな瞬間も。色んなレビューを見てると今作はかなりダンスの要素が多いみたい。なので過去作を聞いた時に同じような感想が出てくるかは分からないけど、少なくとも聞いてみようという気にはなった。

それにしても、インディ・ロック界隈に見られるこういうレビューは何とかならないもんだろうか。書き手の自己満足だけが伝わってきて、肝心の音楽そのものやその音楽を聞いた時の感覚(ECDが昔、レビューはリスナーが思いを共感するためにある、みたいなことを書いてて激しく頷いた思い出がある)が伝わってこない。読み手に音楽を聞かせるどころか、却って遠ざける要因になってるんじゃないかと真剣に思う。少なくとも実際オレがそうなってる。

2013年2月12日火曜日

Wolf24『President's Wolf』

昨日(2/11)のGONZALES@池袋bed、素晴らしかった。一番くらったのは仙人掌のライブ。ゲストで出てきたISSUGIとのステージがアグレッシブでカッコよすぎた。ライブでこんな衝撃、ラップ以外の音楽も含め久々。他にもO.I.のライブを始めライブもDJも最高で、bedの雰囲気と相まって凄く良いパーティーだった。

そのGONZALESにDJで出演していたWolf24のMIX CD、現場でゲトりました。残念ながら、Wolf24がDJしてた時間は酔い潰れてて記憶にないけど…。でもこのMIXは最高。レゲエやソウルが緩やかにMIXされてて、かなりリラックス。あまりにもリラックスしすぎてて仕事のBGMには向いてないけど、休日や休憩の時間にはもってこいなんじゃないでしょうか。


2013年2月6日水曜日

Sasha Go Hard『Round 3』

シカゴのフィメール・ラッパー、Sasha Go Hardの新作。これまでのSasha Go Hardのミクステはどこか一本調子な感が否めなかったものの、今作はなかなかいい感じ。Diploや、同じシカゴのKatie Got Bandzを手掛けたBlock On The Trakk等によるトラックもバッチリ。1曲客演のKreayshawnもはまってます。これまた同郷のGBE周辺の音とも違った仕上がりで面白い。

2013年2月4日月曜日

Curren$y『New Jet City』

2月3日はスーパーボウルの開催日。ミクステのリリース・ラッシュあるかなと思ってたら、そうでもなかった。これと、あとはLil Bくらいか。Datpiffが「ハーフタイムにBeyonceを聞く気にならないんなら、Spittaの新作を聞け」ってツイートしてたのは笑った。Jetlifeからの客演はYoung RoddyとTrademarkの2曲だけで、Rick RossやFrench Montanaなど他からのゲストが結構多め。JuvenileをFeatしてるのは驚いた。Trinidad Jamesは最近みんな入れてきますね。ミクステの内容は、まあいつも通りなんだけど、やっぱりすごく気持ちいい。Curren$yのこのレイドバック感は最高。ゆらりとスモーカー気取りながら聞いてる。