16FLIP、BLYY、PUNPEE等による黒くタイトなビートに、時折ブルースのような哀愁を漂わせるリリカルなラップ。客演はなし。同様の作風のラッパーとは一線を画すかのごとく、skitのように挟まれる不穏なトラック。こうした要素だけでも、十二分に最高のラップ・アルバムになっている。
しかし、このアルバムをより特別なものにしているのは、何といっても「囚 - Under Parole's Demo」。KILLah BEEN自身が体験した2年間に及ぶ刑務所暮らしの始まりと終わりが、ラップというよりもポエトリー・リーディングのような形で表現される26分間の大作(こうした作風は、TBHの「We Must Learn」や「路上」を思わせる)。
淡々としたビートの上で、刑務所の悲惨な暮らしやその中でのKILLah BEENの心境が言葉の海となって綴られる。その様はまるで映画やドキュメンタリーのよう(それこそ『預言者』を思わせる)。聞いていく内にズブズブとはまっていき、最後には曲の世界に飲み込まれる。今作唯一のメロウな瞬間である終盤になると、自然と目に涙が溢れてくる。圧倒的な1曲。キラキラと光り輝くFla$hBackSとは対極にあるような重い感触。でも、これもヒップホップというジャンルの持つ魅力の1つ。