2013年3月27日水曜日
誰も知らなかったココ・シャネル
ココ・シャネルの生い立ちから戦後まで数々のエピソードを掘り起こし、なぜ彼女が反ユダヤ・反共主義になり、最終的にナチスのスパイになったのかを解き明かしていくノンフィクション。Twitterでかなり前に話題に挙がっていたもののなかなか買えず、最近になってようやく手に入れた。
ココ・シャネルだけでなく、ココ・シャネルのスパイ活動を行う上でのパートナーだったハンス・ギュンター・フォン・ディンクラーゲ男爵(通称シュパッツ)という人物の活動についても、フランス情報部の資料などを元に詳細に書かれている。この2人に関するエピソードを補足するように、当時のヨーロッパの政治状況に関する記述もあるので、予備知識が無くとも読みやすい。また本書はそうした政治的なトピックだけでなく、誉れ高いシャネルの香水「No.5」の開発についての逸話や、シャネルの登場が当時のファッション界に与えた影響など、「シャネル」というブランドの歴史にも大きくページを割いている。
中には、ココ・シャネル自身のパーソナリティについての言及もある。その奔放で強気な性格や、イギリス国王の従兄などを含んだ錚々たる面々が並ぶ男性遍歴。更にそこから派生して、ココ・シャネルを含めた戦前・戦中の富裕層の生活。これらの記述から想像されるのは、『ミッドナイト・イン・パリ』に描かれているような華麗な生活よりも、(国は違うが)『地獄に堕ちた勇者ども』の退廃的なそれに近い。何となくではあるが、当時のヨーロッパの富裕層の生活の一端が窺い知れてなかなか興味深い。
2012年1月3日火曜日
サイプレス上野、東京ブロンクス - LEGENDオブ日本語ラップ伝説
あけましておめでとうございます。今年もよろしくどうぞ!
今年1発目は、正月休みの間に読んでたコレ。「bounce.com」(今のタワレコオンライン)に
連載されてた同名の企画に、単行本語り下ろしの原稿を2つ加えてあります。
連載当時(2007年~2009年)にかなり読み倒して、内容もほとんど覚えてしまっていたので
買う必要はなかったんですが、何となく記念に買っちゃいました。
んで読みなおしてたんですが、やっぱり面白い。毎回日本語ラップの名盤について2人が
熱く語ってるんですけど、内容がかなりディープ。連載時に、出てくる言葉や人物名を調べ
ながら読んでて「あー、自分はまだまだだなー」と思った記憶があります。日本語ラップを
これから掘り下げていこう、って人にはかなりおススメです。キミドリ、ザ・ブルーハーブ、
シンク・タンク、いとうせいこう&タイニー・パンクスの回が個人的に好き。
あと最後のザ・ブルーハーブとライムスターの件は、日本語ラップファン必見。泣けるぜ!
ただ追加原稿の中で本人達が言ってるように、ここ数年のネットを舞台にした日本のラップ
については殆ど触れられていません(アーティスト名を挙げてるだけ)。ここは正直残念。。
連載終了時から最も大きな変化のあった所だと思うので、連載1回分位はページを割いて
語って欲しかったですね。
2011年10月24日月曜日
『V フォー・ヴェンデッタ』とウォール街の占拠運動
映画やコミックは見たことなくても、このマスクに見憶えが
ある人は多いのではないでしょうか。
『V フォー・ヴェンデッタ』。コミックは1988年にDCから発刊、
映画版はナタリー・ポートマン主演で2006年に公開されて
ます。映画版もそこそこ面白いのですが、設定がちょこっと
変わっていたりするので、個人的には原作のコミックの方が
オススメです。
核戦争後のイギリスを支配するファシスト政府に対して、
コードネーム「V」と名乗る謎の男が革命を目指して攻撃を
仕掛けていく、というのが大まかなあらすじです。
原作はアラン・ムーア。『ウォッチメン』の原作で有名ですね。
冷戦真っ最中に書かれたせいか、どちらも「核戦争」が背景
にあるのが面白いですね。ボクはこの時代まだ全然ガキで、
気がつけばソ連もベルリンの壁も崩壊してました。なので
この辺りのリアリティは掴めませんが、興味深いですね。
で、最近ニュース等でこのマスクをちょこちょこ見る機会があります。最近だとNYのウォール街の占拠
(Occupy Wall Street)でこの仮面を被った人がいましたね。東京での同様の運動にもいました。
他にハッカー集団「Anonymous」のメンバーも、この仮面をシンボルとして使ったりしてます。
このマスク自体はガイ・フォークスというテロリスト(?)のマスクなのですが、ウォール街や東京の人、
Anonymousが意識しているのは、コードネーム「V」の方で間違いないですね。「V」は常にこのマスクを
被って、決して素顔を見せません。
「V」が目指す革命は「アナーキー」、原作によると指導者のいない「自発的秩序の状態」です。ちなみに
原作者のアラン・ムーアもアナキストですね。ただ、これとは別に「全て彼ら次第だ」という台詞もあります。
「彼ら」とはイギリス国民の事ですね。「アナーキー」状態だけが選択肢ではなく、ファシスト政府に代わる
新しい指導者・政府を選ぶことも選択肢の一つであり、その選択は「全て彼ら次第だ」と。
「Anonymous」は、単に革命のシンボルとしてこのマスクを使用しているのだと思います。
ただウォール街や東京でこのマスクを被った人は、作中の「全て彼ら次第だ」というメッセージを表した
かったのだと思います。つまり、「政府でなく、自分達がこの国の未来を決める」。その象徴として、
このマスクを被っていたのではないでしょうか。
作中では「V」の行動が最終的にどのような結果となったか、はっきりと書かれていません。
暗闇のハイウェイを男が歩いていく場面で終わります。現実では果たして、どうなるか。
2011年9月24日土曜日
『フランス暴動 移民法とラップ・フランセ』, ロンドン暴動との類似性
珍しく真面目な本について。
いつもアホな本ばかり読んでるわけでは
ないですよ。いやマジで。
フランスで2005年に起こった大規模な暴動に
ついて、ラップ・フランセ(フランスのラップ)の
視点から考察した本です。
特にこの本を探していた訳でもなく何となく
買ってしまったのですが、なかなか良かった。
ちょっとテーマはズレてますが、音楽出版社
から出てる『GLOCAL BEATS』とも被る部分
もあります。
キーワードになってくるのは「郊外」。
「ゲットー」と言い換え可能かもしれません。
「バンリュー」と仏語では言うそうです。
このブログで書いたかどうか記憶が曖昧ですが、学生時代にフランス(というかパリ)に
旅行に行ったことがあります。その時に泊まったホテルがパリ郊外に位置していた
のですが、パリ中心部とはまるで別世界でした。
街自体の荒廃感、有色人種の比率の多さ、白人はいてもパリにいる白人とは雰囲気が
明らかに違う。フランス初日の夜にパリからホテルへ向かう電車に乗った際は、
生まれて初めて身の危険を感じました。結果的には何もありませんでしたが。
むしろアジア系の人は、すごい親近感をもって接してくれました。
深夜にボロボロのスーパーで会ったパキスタンから移住してきた人、元気かなあ。
「日本から来た」って言ったら「オウ、ドラゴンボール!」って言われました。
本題に戻ります。暴動のきっかけは、パリ郊外で警官に追われたアフリカ系の若者が、
逃げ込んだ先の変電所で感電死。それをきっかけとして暴動が発生。
その暴動に対して当時内務相のサルコジ(現フランス大統領!)が暴動の参加者を
「ゴロツキ」「社会のくず」呼ばわりし、暴動が更に激化。いかにもサルコジらしい・・・
この暴動の原因は、郊外に追いやられた移民や有色人種に対する社会からの根深い
人種的差別・貧困・警察による抑圧です。これらに対する不満が、件の事件をきっかけ
として爆発し、愉快犯を巻き込んで大規模な暴動に発展したというわけです。
そしてこうした状況を警告してきたのが、ラップ・フランセ。
全てのラップ・フランセがそういうものではないようですが、政治的な主張を
繰り返してきたラッパーがいたことは事実です。しかも暴動の10年前から!
名作『憎しみ』の監督マチュー・カソヴィッツのこんな言葉が本書に載せられています。
「様々な共同体の間にある哲学や開放的態度の欠如が、憎悪や憎しみを生み出している」
こうして見ると、1か月前のロンドン暴動と構造が良く似てますね。
フランスもイギリスも、こうした事態を抑えつけようとやっきになっているようですが、
この根っこの問題を解決しない限りはまた同じような事が起こるでしょう。
イギリスではキャメロンがSNSを制限すると言ったようですが、バカバカしいにも程がある。
最後に、97年に発表されたシングル。タイトルは『人種差別法に対する11分30秒』。
ゲットーに追いやられた「ゴロツキ」達による、「祖国」フランスへの抗議の叫び。
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