2013年3月27日水曜日

誰も知らなかったココ・シャネル





















ココ・シャネルの生い立ちから戦後まで数々のエピソードを掘り起こし、なぜ彼女が反ユダヤ・反共主義になり、最終的にナチスのスパイになったのかを解き明かしていくノンフィクション。Twitterでかなり前に話題に挙がっていたもののなかなか買えず、最近になってようやく手に入れた。

ココ・シャネルだけでなく、ココ・シャネルのスパイ活動を行う上でのパートナーだったハンス・ギュンター・フォン・ディンクラーゲ男爵(通称シュパッツ)という人物の活動についても、フランス情報部の資料などを元に詳細に書かれている。この2人に関するエピソードを補足するように、当時のヨーロッパの政治状況に関する記述もあるので、予備知識が無くとも読みやすい。また本書はそうした政治的なトピックだけでなく、誉れ高いシャネルの香水「No.5」の開発についての逸話や、シャネルの登場が当時のファッション界に与えた影響など、「シャネル」というブランドの歴史にも大きくページを割いている。

中には、ココ・シャネル自身のパーソナリティについての言及もある。その奔放で強気な性格や、イギリス国王の従兄などを含んだ錚々たる面々が並ぶ男性遍歴。更にそこから派生して、ココ・シャネルを含めた戦前・戦中の富裕層の生活。これらの記述から想像されるのは、『ミッドナイト・イン・パリ』に描かれているような華麗な生活よりも、(国は違うが)『地獄に堕ちた勇者ども』の退廃的なそれに近い。何となくではあるが、当時のヨーロッパの富裕層の生活の一端が窺い知れてなかなか興味深い。